即席 TeX 講座

このサイトの談話室(掲示板)で数式を使うための基礎知識。

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 2008 年秋、このサイトの談話室(掲示板)でも美しい数式が使えるようになった。

 しかしその入力方法は初心者には取っ付き難いものとなっている。

 誰にでもあまり恐れないでチャレンジしてもらいたいので、 さっと最後まで読み通せて、さっと使えるくらいの説明をしようと思う。

 と言っても、うちの掲示板で数式を使う為だけに、わざわざこんな説明を読んで学ぶのは、 時間の無駄だと思う人もきっといると思うのだ。  その気持ちは分かる。  それで、この掲示板以外でも役に立つ説明にしたいと思う。  そうすれば少しはやる気が出るだろう。

 うちの掲示板での数式表示は TeX というシステムを使っている。  普通の人はこのシステムにあまり触れる機会は無いかも知れないが、 理系の学問の道を進む人にとっては、ここ十何年かずっと、 ほとんど業界標準と言っても良いくらいのものとなっている。  論文の提出も、出版も、これを使うように要求される事が増えてきている。

 だから、これから理系分野へ進学しようとしている高校生にとっても、 ここで 10 分やそこらを使ってこのシステムについて少し知っておくのは 役に立つ事だと思うのである。  読者対象は、 「今まで TeX というものを聞いたことも触った事も無い高校生」レベルに設定しよう。

 なお、ここで学んだ内容は、次のリンク先で自由に練習できるようになっている。

数式掲示板 TeX 練習機


 なお、TeX についてちゃんと勉強したい人には次の入門書がお勧めである。

 [改訂第6版] LaTeX2e 美文書作成入門

 日本語 TeX の主流が LaTeX 2ε(ラテック・ツー・イー) となっているらしい。
 本書はその解説である。 CD もついている。
 この一冊があれば、ほとんど問題なくどんな文書も作れるだろう。


質問リスト
1. TeX って何?
2. LaTeX って何?
3. ところで、TeX とか LaTeX とかってどう読むの?
4. 日本語は使える?
5. どこで使えるの? どこで手に入るの?
6. どうやって使うの?
7. どうして掲示板に TeX のコマンド体系を採用しているの?
8. インライン数式モード
9. ディスプレイ数式モード
10. 基本的な数式コマンド
11. 色んな記号の表し方
12. カッコの書き方
13. 空白を入れて微調整
14. ベクトルの表し方とか
15. こうするとキレイだぞ
16. 式番号を入れる
17. 複数行の位置揃えなど
18. 行列を書く方法
19. 場合分けを書く方法
20. この掲示板だけの独自コマンド


1.TeX って何?

 そもそもは数学者のクヌース氏が・・・ってのは TeX の入門書になら どれにでも載っている状態だから軽くすっ飛ばして話そう。  もうかなり昔のことだが、当時は数式を含んだ文書の出版のレイアウトが 美しくないものが多くて、それに不満を持った彼が、 いいソフトを作ってやろうじゃないか、と高性能なものを作り上げてしまったのだった。

 数学者の作ったものだから、数式が美しく表現できることは当たり前だと思うだろう。  しかしそれだけではなく、印刷や出版についてはほぼ何でも出来る性能を持っているのである。  化学記号や音楽の楽譜の表現にも応用が利くほどだ。

 ちなみに、現在の日本の出版社の中にはこの TeX を取り入れている会社も増えているのだが、独自の高性能ソフトを導入して数式などを組んでいる会社も まだまだ結構ある。  TeX こそが唯一最高!ってわけでもない。

 TeX のいいところは、さらに、無料だということだ。


2.LaTeX って何?

 世の中、高性能なら何でも良いってわけでもない。  何でも出来るってことは、それだけ設定しなきゃならない項目が多いということだ。  これは多くの人にとって不幸を招く。  機能はある程度制限されていた方が扱い易いのだ。

 それで、TeX をベースに取り込んで、 簡単な命令だけで、大抵の人がやりたそうなことが少な目の選択肢から選べるシステムが作られた。  その一つが LaTeX である。  その結果として、仕上がりがある程度、画一的なものになるわけだが、これは仕方がない。  これは TeX の性能のせいではなく、LaTeX ってのがそういうものだからだ。

 他にも音楽用の TeX とか、似た思想のものが一杯出ている。


3.ところで TeX とか LaTeX とかってどう読むの?

 日本人には正確に発音する事は難しいらしいんだ。  TeX の名前の起源がギリシャ語らしくて、X は喉の奥で発音するらしい。  それで日本では、「テフ」とか「テック」とか呼んでいる。  「テック」じゃありがちな名前なんであまり通じないと思うけど、 そう呼ぶ人もいるらしい。

 LaTeX の方は私の場合「らてふ」だな。 日本ではそれが通じやすいと思う。

 アメリカ人の友人は「テックス」「ラテックス」って発音してたけど、 それがどこでも通用するのかは分からない。


4.日本語は使える?

 TeX は英語圏で作られたものなので、 実は日本語の事はあまり考えられていないという弱点を持っている。  それで日本語対応をした改造版が作られているのだが、 有名な改造が 2 種類あって、分派が出来てしまった。

 少しばかり、操作と仕上がりに差があるのだ。

 さらに、TeX に関連した便利なソフトも色々と出ているのだが、 すぐには日本語に対応してくれないという不幸もある。  それでも頭のいい人たちによって努力は続けられている。

 うちの掲示板では、色々と事情があって、 日本語が使えないバージョンを使う必要があった。  だから数式の中に日本語が入れられないという不便がある。  申し訳ない。

 それと、知っているだろうか?  日本と諸外国とで、使っている数学記号に幾つかの違いがあるということを。  日本でおなじみのあの記号やあの記号がオリジナル版そのままでは使えないのだ!!  もちろん、フォントを差し替えてやれば問題ないし、 ちょっと特殊な命令を使って無理やり作ることも出来る。

 しかしそういう事情があることだけは知っていた方がいいだろう。

 対応策は後で個別に話すつもりだが、気になるだろうから紹介しておこう。  例えば、≦ や ≧ などは、下の線が二本ではなく一本だったり、 近似を表す ≒ なんて記号は点が一つなかったり、代わりに波々の線で表したりする。  いや、やっぱりややこしい対応策を紹介するのはやめておこう。  掲示板での議論のためにそこまでやる必要もあるまい。  すでにあるフォントで代用して欲しい。


5.どこで使えるの? どこで手に入るの?

 ありがたいことに、Windows や Mac にも移植されている。  Linux でも使える。  ということは普通の人が使うのに困ることはないというわけだ。  使うマシンによって設定の仕方にわずかな差があるけれども。

 基本的に無料で手に入るので、ネットで探してこればいいのだが、 TeX というのは多数のファイルが集まってシステムになっているものなので、 必要なものを自力で集めるのが難しい。  最近では、その辺りを自動でやってくれるインストーラーが出回っていて本当に助かる。

 しかし初心者は付録 CD がついているような入門書を買ってきて、 そこに書かれている手順に従ってやってみた方が安全だろう。


6.どうやって使うものなの?

 ちゃんと使えるようにするための最初の設定はなかなか面倒だったりするのだが、 そこは入門書やインストーラーの助けによって何とか乗り越えたとしよう。

 次にやることは、テキストエディタを使って文章を書いたファイルを作る事である。  Word や Excel のように専用の画面があるわけではない。  必要なコマンドはその文章の中に一緒に埋め込んでいく。  数式を書くコマンドもあれば、文書の書式を設定するコマンドもある。  本みたいな構成にしたいのか、短いレポートのような構成にしたいのかとか・・・、 A5 版で仕上げたいとか、見開きで両側に少し寄せたいとか、ここで段落を変えたいとか。

 そのファイルを、そうだな・・・例えば、test.tex と言う名前で保存したとしよう。  それが出来たら、そのファイルを LaTeX に読み込ませる。  すると、この場合、test.dvi という名前のファイルを作ってくれる。  dvi ファイルと呼ばれるものだが、私と私の仲間は「ドゥビファイル」と呼んでいる。  この中に、印刷に必要な情報は全て入っている。  ページの割り振りとかレイアウトとかは自動でやってくれてある。

 ところがこの仕上がり具合を確認するためには、dviout と呼ばれる、 別の専用ソフトを使って開くことが必要なのである。  何とも不便に思えるが、もともと出版用のソフトなのだから、 必要な最終生成物は dvi ファイルなのである。  この閲覧用ソフトも無料であり、TeX システムをインストールすれば一緒に付いて来る。

 最近では、専用の dviout を持ってない人に渡しても読めるように、 dvi ファイルから pdf ファイルに変換したり、画像ファイルに変換したりする ソフトが出回っていて便利である。


7.どうして掲示板に TeX のコマンド体系を採用しているの?

 なぜ掲示板に TeX のコマンドを採用したか?  物理関係者にとっては、これが最も普及している数式表示のコマンド体系だからである。  しかし、もっと根本的な理由がある。

 実はこの掲示板は、本物の LaTeX を利用して 数式画像を作り出しているのである。

 管理人である私の自宅には、この目的のために、一台の古いパソコンに Linux を インストールしてあり、LaTeX が常時起動した状態にしてある。  そしてユーザから画像表示の要求があると、テキストファイルを自動で作り、 それを LaTeX に通して dvi ファイルを作り出し、 それを別のソフトで画像変換してユーザーに返すという処理をその場で行わせているのである。

 こういう特別な処理は格安のレンタルサーバではやらせてもらえない。  だから自宅に専用サーバを置く必要があった。

 この掲示板で表示される数式は、本物の LaTeX がたった今、 ユーザーが掲示板を見るたびに、その場で作り出した画像だということだ。

(その後の改造により、LaTeX を呼び出すのは投稿時のみにして、数式を画像ファイルとして保存する方式に変更しました)


8.インライン数式モード

 ここから先は数式に限った説明をしよう。  数式の記号の大きさは TeX の側で勝手に調整してくれるから楽である。  それが気に入らないときは手動で手を加える事も出来る。

 文書の中に数式を混ぜ込む方法は、大きく分けて二つある。

 「インライン数式モード」といって、 文章と同じ行の中に入れる方法。  二つのドルマーク $ で挟んでやればいい。  一行の高さに納まるように、なるべく小さく表示してくれる。  典型的なのは和や積分の記号で、次の例のように、崩して表現してくれる。

インライン数式
普通の表現

 それでも限界があるので、あまり複雑な式は書かず、 簡単な式 をこんな具合に挟んだり、 あるいは などの記号を表示するくらいにしておこう。

 実はドルマーク $ で挟む以外にも方法がある。  いや、別に知らなくても使うのに問題はないが、それは正式に学べばそのうち自然に知る事になるだろう。  うちの掲示板では $ で挟む方法以外は受け付けないようになっている


9.ディスプレイ数式モード

 もう一つは、「ディスプレイ数式モード」といって、 独立した行として数式が表示されるやり方である。

 本物の LaTeX の場合、やり方は簡単で、\begin{display} と \end{display} の間に数式を書けば良い。  しかしこれだと自動で式番号を振ってくれないので、別のやり方もある。

 \begin{equation} と \end{equation} の間に数式を書けば良い。  しかしこれだと、行が 2 行以上になる場合の表現が出来ないので、そういう場合には代わりに

 \begin{eqnarray} と \end{eqnarray} の間に数式を書けば良い。  しかしこれだと式番号が自動で割り振られるので、式番号が要らない場合には代わりに

 \begin{eqnarray*} と \end{eqnarray*} の間に数式を書けば良い。  しかしこれだと、位置合わせに少しバグがあるらしくて、格好悪いので、代わりに

 \begin{align*} と \end{align*} の間に数式を書けば良い。

 結局私はいつも、\begin{align*} と \end{align*} の間に数式を書くやり方を愛用している。  一行だけの数式を書くときにこれを使っても別に問題はない。

 うちの掲示板では本物の LaTeX を使っているので、本当はどのやり方でも使えるようにできた。  しかし式番号なんて必要ないし、入れたきゃ手動で入れられるし、 利用者が毎回、\begin{・・・なんて打ち込むのも面倒なので、 <tex> と </tex> で囲むだけで、同じ事が出来るように作ってある


10.基本的な数式コマンド

 次の幾つかのコマンドを覚えるだけで、結構いろいろな事ができるようになる。


書き方 結果
上付き添え字 a^b
下付き添え字 a_b
分数 \frac{a}{b}
ルート \sqrt{2}
\sum_{a=0}^n
極限 \lim_{x \rightarrow 0}
積分 \int_a^b

 TeX のコマンドは大文字と小文字を違う文字であると解釈するので、 例えば \sum の代わりに \SUM として使おうとしても失敗するだろう。

 上の基本を使うだけで次のような応用が出来るようになる。


書き方 結果
分数の合わせ技 \frac{1}{1+\frac{a}{b}}
組み合わせの公式 _n C_r = frac{n!}{r!(n-r)!}
テンソル A^{ij}
相対論っぽい式 \frac{1}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}
意味無いけど複雑にしてみた \sum_{i=0,j=0}^{n_a}
これも意味無いけど \lim_{xyz}
多重積分 \int \int \int

 この例でやっていることについて色々とコメントしたいことがある。

  • まず、分数の中に分数を入れたりしても、文字の大きさの調整は TeX が 自動的にやってくれるということだ。 これは助かる!
  • 2 番目の例で分かるように、いきなり添え字から書き始めても大丈夫だ。  これで炭素の同位体の とかも表せるな。
  • 添え字が幾つもある場合は、その全体を { } で囲うといい。
  • 上付き添え字は、累乗を表すのにも使う。 LaTeX は美しく表示する為の道具であって、別に数式の意味までは表していないのだ。
  • \sum や \lim の下側には実は何でも入れられるし、 全く何も書かないで取っ払ってしまってもエラーにはならない。
  • 積分の積分範囲も必要がなければ別に入れなくてもいい。
 それにしても最後の例の多重積分は間が開き過ぎて気持ち悪いな。  これはちゃんと対処法があるから後で紹介する。


11.色んな記号の表し方

 あとは やら、 やら といった数学記号の書き方を学べば、 表現の幅はぐっと広がるだろう。  よく使うものをピックアップしておこう。


書き方 メモ
\times  
\div 大人になるとあまり使わんけどね。
\pm プラスとマイナスを上下逆にした \mp ってのもある。
\neq  
\leq 小なりイコール。海外ではこう書くらしい。
\geq 海外版、大なりイコール。
\leqq 日本版、小なりイコール。使えないことがある。
\geqq 日本版、大なりイコール。使えないことがある。
\sim 色々使えます。
\cdot 内積とかに使える。
\cdots  
\equiv  
\partial 偏微分に使えますね。
\nabla ナブラです。
\bigtriangleup ラプラシアンに使えますね。
\Box ダランベルシャンに使える。 B は大文字なので注意。
\dagger ダガーって記号です。量子力学で使いますね。
\hbar これも量子力学で使います。
\therefore 「ゆえに」の記号ですね。
\infty 無限。
\rightarrow lim の括弧の中でも使ってたね。

 私はいつも、"latex" でググってすぐに見つかるこのサイトを参考にする事が多い。  ここで紹介した以外にも色々載っている。

 ギリシャ語のアルファベットも同じ要領で書く。   なら、\alpha なら \beta といった具合に、その英語名を書けばいい。  ギリシャ文字の読みの綴りは全部分かるだろうか?  まぁ、それは自分で調べてもらうとしよう。

 しかし少しばかり言っておいた方がいいことがある。  エプシロンには、 の二つの書体があって、 それぞれ \epsilon\varepsilon だ。  ファイにも二つの書体 があって、\phi\varphi だ。  他にもあるが、よく使うのはこれくらいだろう。

 あと、ギリシャ文字の大文字、 などを 表したいときは \Gamma\Delta\Phi\Omega などのように、頭文字を大文字にする。

 ここまで分かれば、後はもう技の組み合わせと知恵次第で、ほとんどの式は書けるだろう。  まだ出来ない事と言ったら・・・、 記号の上にドットを付けたり、ベクトルの矢印を付けたり、太字にしてみたり、 そういうのはまだ説明していないが、それはもう少しだけ後にしよう。  優先したいことが他にある。


12.カッコの書き方

 使えるカッコには 6 種類か、いや、もう少しあるが、全ては紹介しない。

 普段は ( ) を使っていればいいが、式が複雑になってくると他の形も使いたい。  [ ] という形のカッコも、数式の中でそのまま使うことが出来る。  さらに、{ } という形のカッコも登場させたいこともあるが、 この記号は TeX のコマンドとして別の意味で使ってしまっているので、 これを表示する時には \{   \} のように書かなくてはいけない。

 他に、物理でよく使うカッコと言えば、< と > だが、 どうやら不等号を代用してもうまく行くようだ。  これらを表示するために、\langle\rangle という命令がちゃんとあるので、 今までそれを使わなくてはならないかと思っていたのだが、今試したら、 大きさの変更なども他のカッコと同じように問題なく出来た。  しかし形に少し差があるので、試してみて欲しい。

 さらに、|(縦の棒)もカッコの一種だった。  これは行列式を書いたりするのに使う。

 ところで、TeX は式の意味など考えてはいないから、 カッコが閉じていようがいまいが、書いた通りにそのまま表示してくれる。  例えば、( で開いて、}を使って閉じても何の文句も言わないということだ。  制限なしに好きな式が書けるので、本当にありがたい。  量子力学のブラ・ケットなんてのは、< で開いておいて | で閉じたりする必要があるからな。

 しかしこれは、 どのカッコをどの大きさで書くかという判断を TeX はしないということでもある。  それを手動でやるのはなかなか面倒だ。  そこで、\left\right という命令がある。

 例を見てもらうのが早いだろう。

書き方 結果
\left( \frac{f(x)}{g(x)} \right)

 このように、かっこの直前に、\left と \right の命令を入れて、 どのカッコとどのカッコが対になっているかを指定してやると、 それにふさわしい大きさで描いてくれるのである。

 次の例のようなデタラメなことをしても大丈夫だ。

書き方 結果
\left( \frac{f(x)}{g(x)} \{)[ \right)
\left( \frac{f(x)}{g(x)} ) \right\}

 ただし、\left\right とは 必ず対になって閉じていなければならない。  何重に使ってもいいが、一行の式の中で、必ず \left と \right の数が同じでないと エラーになってしまう。

 これは少し困ったことになるのだ。  カッコを自動で大きく描いて欲しいが、片方だけ書きたいということがある。  あるいは、後で出てくることだが、式が長いので複数行に折り返したいことがあって、 その行の中ではカッコが閉じないことがある。  そういう場合はダミーを使う。  例えば、\right. という具合に、\right の右に ドットを入れておいてやると、右端のカッコは描かれないことになる。  これは左端でも使える。  変な例で申し訳ないが、次のような感じだ。

書き方 結果
\left{ \frac{f(x)}{g(x)} \right.
\left. \frac{f(x)}{g(x)} \right|

 それでも TeX が描いてくれるカッコの大きさが気に入らないことがある。  そういう場合はもはや \right や \left に頼るのをやめて、手動で大きさ調整をする。  例えばカッコの直前に \big というコマンドを置くと、 少し大きくなる。  それでも大きさが足りないときは、\Big\bigg\Bigg、 というものを使い、この順で大きくなる。  これは左右のペアを気にする必要は無い。


13.空白を入れて微調整

 TeX が自動でやってくれるとは言え、具合が気に入らない事がたまにある。  ほんの気持ち程度、間を空けて欲しいと思う事がある。  しかしスペースをいくら入れてみても無視されるだけで何も変わらない。

 そういう時は、\ を使う。  \ マークの直後に半角のスペースが入っている。  これが少しだけ空白を入れるコマンドだ。  \ \ \ \ \ \ \ と繰り返せば、 それだけ多くのスペースを取る事が出来る。  こんなのをあまり繰り返したくないときは \quad を使えば、 倍のスペースになるし、\quadd ならさらに倍だ。

 いや、もっと微妙な調整がしたい、という時には、 \,(\quad の 3/18)、 \>(\quad の 4/18)、 \;(\quad の 5/18)という命令がある。

 マイナス方向へ移動する命令もあり、\! を使えば、 (\quad の 3/18)だけ間を詰めることが出来る。

 これを使って、前に醜かった 3 重積分をきれいに直してみよう。

書き方 結果
\int \!\!\! \int \!\!\! \int


14.ベクトルの表し方とか

 さあ、話も終盤に近づいた。  ベクトルを表現したり、記号の上にドットを付けたりするのは、次のようにやる。  下手な説明より、もう見た方が早いな。  よく使うものだけ列挙する。

書き方 結果
\vec{a}
\dot{a}
\ddot{a}
\bar{a}
\hat{a}
\tilde{a}
\overrightarrow{ab}
\overline{ab}
\underline{ab}

 さて、ベクトルを太字で表したいと思ったら、どうしたらいいだろうか?  英語のアルファベットだけなら、簡単に書体を変える方法がある。  これはそれぞれのインストールの設定によっても結果が違うのであるが、 この掲示板ではどうなるか見てみよう。

  書き方 結果
比較用 abcABC \alpha \Gamma
ローマン体(立体) \mathrm{abcABC \alpha \Gamma}
ボールドフェイス(太字) \mathbf{abcABC \alpha \Gamma}
イタリック(斜体) \mathit{abcABC \alpha \Gamma}
カリグラフ(大文字のみ) \mathcal{abcABC \alpha \Gamma}
ドイツ文字? \mathfrak{abcABC \alpha \Gamma}

 お? ギリシャ文字の大文字には太字や斜体が適用されるなぁ。  小文字の方にはどれも変化が無いけれど。

 ではアルファベット以外を太字にしようと思ったらどうしたら良いか?  実はちょっと面倒なのである。  これは掲示板で数式を使う為だけの即席講座なのだから、我慢せよとでも言いたいくらいだが、 一応、説明しておこう。

 あれ? ・・・。 いや、やっぱり我慢して欲しい。  今気付いたが、この掲示板の仕様上、うまく行かないことが分かった。  コマンドの中にさらに $ マークを使う必要があって、 そうするとこの掲示板は数式の区切りをうまく認識できないのである。  申し訳ない。

 最近の LaTeX には太字を出すためのもっと楽な方法があるかも知れない。

 この問題は独自コマンドを定義することで回避することにした。


15.こうするとキレイだぞ

 あとは、ちょっとした書体のこだわりの話だ。  例えば sin とか、cos とか arcsin とか。  こういうのは変数と区別するために、ローマン体で書いた方が良い。

 実はその為のコマンドがあって、\sin などと書けばいいのだ。  他にも \cos \log \ln \exp \cosh \arctan など、 よく使う関数は先頭に \ マークを付けるだけで書体が変わるようになっている。

 その他に、微分に使う dx なんかは \mathrm{d} x と書いた方がいいとかいう工業規格みたいな話もあるが、 掲示板で急いで話す時には、まぁそれほど気にする事もないと思う。

 それと、まだあった。  rot と div と grad など。  これらも \mathrm{rot} などと書いた方が絶対にきれいだと思う。


16.式番号を入れる

 式の終わりに \tag{1} というのを書き込めば、式から少し離れた右端の位置に、 (1) と表示されるようになる。  \tag{a'} と入れれば、(a') と表示されるようになる。  数字か英語のアルファベット、プライム(ダッシュ)くらいしか入れられないと思う。

 掲示板で議論する分には、これくらいの知識で十分だろう。


17.複数行の位置揃えなど

 式が長くなって途中で折り返したいとき、あるいは複数の式を列記したいとき、 \\ マークを付けると、そこで改行される。

 しかしただそれだけだと分けられた全ての式は右端で揃えて並べられてしまうので、 各行にそれぞれ一箇所だけ & マークを入れることで、 その位置を基準に式の横並び位置を合わせることが出来る。

書き方 結果 メモ
f = 2(3x + 2y) - 4(2x + y) \\
= (6x + 4y) - (8x + 4y) \\
= - 2x
位置合わせ無し
f &= 2(3x + 2y) - 4(2x + y) \\
&= (6x + 4y) - (8x + 4y) \\
&= - 2x
位置合わせ有り

 実は & マークは一行に複数入れられるのだが、式が無理やり引き剥がされたりして なかなか思ったようにはなってくれない。  それで私の場合、等号の直前にだけ付けるか、各行の先頭にだけ付けることが多い。

 ところで、折り返した式を微妙に後ろにずらして見栄えを良くしたいことがある。  それで根号の途中や分数の途中に & を挟んでみたくなったりするのだが、 こういうのはエラーになったり無視されたりする。  仕方ないから式の先頭に & を入れておいて、空白を入れて調整するしかない。

 行と行の間が妙に詰められてしまって気に入らない時は、 \\ の直後に一切のスペースを空けないで、 \\[12pt] などという記述を入れればいい。  この数字を大きくするほど行間が広くなる。  \\ と [12pt] の間に空白を入れてしまうと、[12pt] の部分が次の行の数式の一部だと みなされてしまう。

書き方 結果
f &= 2(3x + 2y) - 4(2x + y) \tag{1} \\[12pt]
&= (6x + 4y) - (8x + 4y) \tag{2} \\[12pt]
&= - 2x \tag{3}

 この例はちょっと開き過ぎか。  行間指定は本当に気になるときだけ入れればいい。  式番号を入れたい場合は上の例のように、改行より前に入れておくこと。


18.行列を書く方法

 さあ、かなり高度になってきた。  行列なんて、掲示板の議論で必要になることがあるだろうか?  本当に書きたい人は自分で調べてくれと言い放つ事も出来るが、 これさえ終われば、ほとんど全てを説明し終えたようなものなので、やってしまおう。

 まずは、次の例を見て欲しい。

書き方 結果
\begin{array}{ccc}
a & b & c \\[4pt]
d & e & f \\[4pt]
g & h & i
\end{array}

 簡単なものだ。  第一に、\begin{array}\end{array} で囲む。  次に {ccc} と書くが、これは 3 列の行列を書くことを意味していて、3 列とも中寄せだという意味だ。 どれかの列を左寄せにしたければ c の代わりに l を使うし、右寄せなら r にする。  4 列にしたければ、{cccc} とか、場合によっては {lccr} とかになる。  その後の書き方は、式の折り返しと同じである。  ここでは & を各成分の区切り記号に使うわけだ。

 この両脇に \left(\right) を付ければ、自動的にちょうど良い大きさの囲いが付くだろうから、よく知っている行列の形になる。

 次のような記号を各成分の代わりに入れてやれば、色々と表現の幅が広がる。

  書き方
\cdots
\vdots
\ddots

 他にも行列の中に実線や破線を入れたり色々な事が出来るのだが、 そこまでやる気があるのなら、本を買ったりして勉強した方が良いだろう。


19.場合分けを書く方法

 ここまで分かったら、次のような事も出来る。  今までの組み合わせ応用技に過ぎない。

書き方 結果
\delta_{ij} = \left\{ \begin{array}{cl}
1 & (i=j) \\[12pt]
0 & (i\neq j)
\end{array}
\right.


20.この掲示板だけの独自コマンド

 TeX ではユーザが独自にコマンドを定義できるようになっている。
 以下のコマンドはこの掲示板だけで使えるものである。

書き方 結果 メモ
\Vec{a} 太字でベクトルが書ける。 V は大文字。
\D ローマン体で d を書いてくれる。
( \d というコマンドは TeX で別の意味があるので、 混乱を避けるために大文字にしてある。)
\Rot \Div \Grad ローマン体で書いてくれる。
( \div は ÷ を表示するコマンドなので頭文字を大文字にして避けている。他もそれに合わせてある。)
\dif{f}{x} 微分が簡単に書ける。
\pdif{f}{x} 偏微分が簡単に書ける。
\kinji オリジナル版にはないが、組み合わせで作った。
a\sub{0} a\sup{0} 普通の添え字では大き過ぎることがあるので作った。

 2 階微分や n 階微分についても工夫すれば上のコマンドを使って簡単に書ける。  例えば \dif{^2f}{x^2} と書けば のようになるだろう。  また \pdif{}{x} のように最初のカッコの中を空にして書けば のような演算子も表現できることになる。


 よくぞここまで読んで下さった、という感じだ。  なーに、途中を飛ばしたとしても別に構わない。  要するに、大体のやり方が分かって、 自分が「きれいだな」と思える程度に表現できたらそれでいいのだ。

 凝る人はとことんまで凝るだろうし、 細かいことを言えばまだまだ色んなテクニックがある。  私も今回、この記事を書くために調べ物をしていて、 こんな技もあるのか、と発見したりした。  (うちの掲示板では使えないかも知れないが。)

 しかし所構わず凝ればいいというものでもないから、 あまり人の目など気にしないで、 数式が書ける事自体を楽しんで行って貰いたいと思うのだ。


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