様々な半導体部品

今ではトランジスタにも色々とある。

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バイポーラトランジスタ

 前回話したトランジスタは、一番初めに作られた方式のもので、しばらくの間はトランジスタといえばこれしかなかった。

 その後、違った方式のものが開発されたので、従来型のトランジスタは「バイポーラトランジスタ」と呼んで他と区別することになった。電気を流す経路に p 型半導体と n 型半導体の 2 種類を使っているからである。

 今回は他にどんな種類の半導体部品があるかを簡単に紹介していこう。


電界効果トランジスタ

 「電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)」は英語の頭文字を取って「FET (エフ・イー・ティー)」とも呼ばれる。従来型のトランジスタと同じく 3 本の端子があるが、呼び名は違っており、ソース(S)、ドレイン(D)、ゲート(G)である。

 ソースとドレインの間に電流を流し、ゲートに電圧を掛けることで、その電流量を制御する。電圧を掛けることで電気が流れやすくなるタイプと、電圧を掛けることで電気が流れにくくなるタイプがある。

 バイポーラトランジスタはベースに流す電流によってコレクタに流れる電流を制御するものだったが、FET は電流を流さずに電圧の変化だけで制御するので無駄な電力を消費しないという大きな利点がある。

 電流が流れる経路には p 型半導体か n 型半導体かのいずれかしか使っていないので、FET は「ユニポーラトランジスタ」に分類される。

 スイッチとしてかなり理想的な性能を持っており、バイポーラトランジスタと比べて欠点らしきものは見当たらない。強いて言えば、バイポーラトランジスタの中の特に安いものよりは高い、というくらいだ。しかしこれは使う部品を決める上でかなり重要な要素かも知れない。

 FET が従来のトランジスタを完全に駆逐してしまわない理由は値段だけだろうか。現状をうまく説明するのは難しい。実のところ、近頃はほとんどの回路は IC チップになってしまっており、単独のトランジスタを回路中に使用する機会はどんどん減っている。

 それで、従来のトランジスタも FET も、単独の部品としては絶滅寸前なのである。それでも完全に絶滅してしまうことはないだろう。

 スイッチング用途では、ほとんど FET を使うようになってきている。デジタル全盛の時代になってきているから、FET を使う場面は多いし、IC チップの中身もほとんど FET である。

 こんな状況の中でバイポーラトランジスタが使い続けられているのは、これまでの長い経験の蓄積があることも理由の一つだろう。資料も多く、回路の挙動がよく調べられており、信頼性があるのである。

 FET の型番は 2SK〜 というものと 2SJ〜 というものが多い。ソースとドレインを結ぶ経路(チャンネル)が P 型半導体であるものが 2SK〜 で、N 型半導体であるものが 2SJ〜 である。

 従来のトランジスタの使い方をマスターすれば、FET はもっと簡単に理解できるようになるだろう。回路の設計自体は従来のトランジスタよりも楽なのである。しかし何しろ、FET には種類が多い。その型番のデータシートを見ないとそれがどういう性質のものかが分かりにくいので、回路図だけでは判断しにくい部分がある。具体的な使い方を説明しようにも沢山の部品の違いについて説明せねばならず、一気にまとめては説明しにくいのである。

 従来のトランジスタの設計が分かれば、もう、自力で調べて何とかできるのではないだろうか。ということで、FET の使い方の説明は後回しになる可能性が高い。


フォトトランジスタ

 光を取り入れるレンズのような窓が付いたトランジスタである。

 ベース電流の代わりに外部からの光を使って、エミッタ、コレクタ間に流れる電流を制御する。光センサとして良く使われる。

 昔は CdS という、光が当たることで抵抗値が変化する部品が光センサとして良く使われていた。これは名前の通り硫化カドミウムを利用しており、有害物質指定されているので、使われなくなってきている。光に対する反応速度が鈍いという特徴があり、このことが利点にもなれば弱点にもなる。

 フォトトランジスタは光に対する反応が速いため、光を使ったデータ通信にも使えるほどだ。

 しかしこれも単独の部品として使われる機会は減ってきており、ノイズフィルタの回路などと一緒に IC 化した「赤外線リモコン受信モジュール」が使われるようになってきている。


サイリスタ

 「サイリスタ」とは、ダイオードにゲートが付いたようなものである。

 SCR と呼ばれることもある。サイリスタも SCR も商標である。サイリスタは、サイラトロンという真空管に似たトランジスタという意味で名付けられ、SCR の方は Silicon Controlled Rectifier (シリコン制御整流子)の略である。

 逆方向には電気が流れないが、このままでは順方向にも電気が流れない。ゲートに電圧を掛けることで ON 状態になり、順方向に電気を流すことができる。一度流れ始めるとゲートの電圧を下げても電流を流すことができ、電流が止まると勝手に OFF 状態に戻る。

 こんなものを何に使うのかと思うかも知れないが、趣味の工作でならあれこれ工夫次第だ。

 実用的には、交流を直流にするときの電力制御に良く使われている。交流なら定期的に電流が 0 になるので勝手に OFF 状態になってくれる。ゲートには ON にするタイミングの信号を送るだけでいい。送るパルスのタイミングをずらすことによって、交流の一周期の間のどのくらいの時間だけ電流を流すかを指示してやることができるので、モーターなどに送る電力を調整してやることができるというわけだ。

 なぜこんな特殊なものをわざわざ紹介するかというと、自分が子供の頃、この回路図記号の正体が分からずに、長いこと悩んだことがあるからである。


ユニジャンクショントランジスタ

 ユニジャンクショントランジスタ(UJT) は、おそらく使う機会はもうないだろう。日本ではもう生産されていない。図記号が FET に似ていて紛らわしいし、名前もいかにもトランジスタっぽいので、どこかで名前を聞いた時に気になる人がいるだろうから少しだけ説明しておく。

 これはかつてはサイリスタに送るトリガー信号を作り出すためによく使われていたものである。

 内部構造は、ダイオードを使って例えられる。例えば N チャンネルの方は、N 型半導体の途中に P 型半導体を一箇所で接合した形になっている。それで、ユニ(一つの)ジャンクション(接合点)のトランジスタというわけだ。

 使い方は割りと単純である。二つのベース B1 と B2 の間に電圧をかけておくと、二つの内部抵抗のせいで、中間地点の電位が決まる。エミッタ E の電位がそれより高くなった時だけ電流が流れる。コンデンサを併用して、コンデンサの充電とともに徐々に電位が高まるようにしておけば、ある電位を超えたところで電流が一気に流れてコンデンサが放電してしまい、また電位が下がる。こうして一定周期で電気が流れたり止まったりを繰り返す回路が作れるというわけだ。

 これなら、わざわざこの部品を使わなくても実現できそうだろう。しかしそう単純ではない。ユニジャンクショントランジスタは、一度電流が流れ出すとある程度電圧が下がるまでは電流が流れやすい状態が続く性質があるので、うまく発振が持続するのである。

 しかし IC の登場で、もっと確実に発振させることのできる回路が安く作れるようになったために、全く廃れてしまった。


オペアンプ

 「オペアンプ」とは増幅回路をまるごと IC 化したようなものである。「OPアンプ」と書くこともあるがそれでも「オペアンプ」と読む。

 入力が二つあるのは、二つの入力の電位差で動作する「差動増幅回路」だからである。電源を省略することがあるのは、一つの IC の中に複数のオペアンプが入っていることがあって、IC の共通電源端子に電源を入れておいてやれば、あとはどのオペアンプも電源を気にせずに使えるからである。

 昔のアナログコンピュータの演算処理を司っていたモジュールなので、演算増幅器(オペレーショナル・アンプ)と呼ばれていた。それが略されて、オペアンプとなったわけだ。

 昔は IC ではなく、小さな基板の上に多数の部品を組み合わせて作ったモジュールとして売られていたのだが、ほとんどを半導体のみで実現し、小型のチップになったお陰で一気に普及した。今は安いものは 100 円以下。高くても数百円である。トランジスタ単体の値段とほとんど変わらない。

 抵抗は半導体への不純物のドーピングの量の調整で実現できるし、コンデンサは半導体の配置の工夫で実現できてしまう。コイルの機能を半導体で実現させるのは難しいが、コイルを使わないで済ませる回路も多くあるので、うまくやればほとんどのことは半導体だけで実現できてしまうのだ。

 まとまった機能を持つ回路が IC として一つの部品となり、そのお陰で故障の可能性が減り、量産で安くなり、みんなが使うので改良もされるし信頼性も増す。このようなものが普及したので、回路をわざわざ一から設計する必要がなくなってしまった。中身が分からなくても、説明書どおりに繋げば高性能が手に入ってしまう。増幅率を決定するための抵抗や、電源などを幾つか追加してやるだけでいい。

 よくある話だが、こうやって便利になった反面、トラブルが起きた時に対処できる職人や、一から設計できる職人が減っている。

 趣味として色々なオペアンプの働きを試すのもなかなか面白い。オペアンプについての解説本はたくさん出ているので、そっちを読んでもらったほうが早いだろうが、余裕があればここにも何かちょっとした解説を書き始めるかも知れない。


デジタルIC

 小規模のデジタル回路を IC 化したものがデジタル IC である。

 デジタル回路はトランジスタの ON 状態と OFF 状態を利用したものである。電圧が高いか低いかを二進数の 1 と 0 に対応させて情報を扱うのである。デジタル回路については後で記事を書くつもりでいる。

 オペアンプと同じように、IC からはゲジゲジのように沢山の足が出ており、その内の 2 本は電源である。他の線は、マイナス極を基準にした電位差によって、1 か 0 かの信号を入れたり出したりする線である。ある電圧より低ければ 0、ある電圧より高ければ 1 といった具合に判断される。中途半端な電圧だとどうなるかは運任せで、不安定である。説明書通りのことが小さなボディの中に実現されており、なかなか面白い。