電池の内部抵抗

回路の設計者は電池の性能も知らねばならない。

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現実に起きていること

 乾電池の寿命が残り少なくなってくると、電圧が下がる。そしてある程度以下に下がったところで、設計された通りには機械が動かなくなり、電池が切れたと判断する。

 しかし電池の起電力というのは、電池内の化学反応の種類によって決まるのであり、変わらないはずではなかっただろうか。

 これには幾つかの理由がある。電池の種類によっては化学反応が進むにつれて、元の反応が阻害されるなどして別種の反応が起こり始め、それによって起電力が変化してゆくことがある。そして、それ以外の理由としては・・・、それが今回の話のテーマなのだが・・・、反応する物質が少なくなったり、反応が阻害されたりすることで、徐々に電子を供給する能力が落ちて行き、回路の中に電位差を保っておくほどの電荷が維持できなくなる、というものもある。

 もし電池が汲み上げた電荷が少しも流れ去らなければ、電池の両端の「電位差」は電池の化学反応の「起電力」と同程度に維持できるであろう。しかし電池が回路に繋がれていて、電池の供給能力を超えるほどの勢いで電流が流れていくとしたら、電荷の数が減ってしまい、電位差を維持できなくなる。つまり、電流が多く流れるほど、電池の両端の電位差は起電力よりも幾分か下がるということである。

 これは電池が弱っていなくても起きることである。電流が流れていないうちは電圧を維持しているが、電流が流れすぎると電池が息切れを起こしてしまう。


代わりの説明

 現実に起きているのは以上のようなことなのだが、電流が流れれば流れるほど電池の両端の電圧が下がるというその度合いを計算できるようなモデルが欲しい。

 電流が流れるほど電圧が下がるというのだから、それは抵抗の働きと非常に似ている。電池の起電力に直列に「内部抵抗」と呼ばれる仮想上の抵抗が入っていると考えればいいのだ。

 実際にはこのような抵抗が入っているわけではないのだが、これは現実に起きることをうまく再現できる。電池が弱まるにつれて、この内部抵抗がどんどん大きくなっていくと考えればいいのだ。やがて回路全体の抵抗よりもこの内部抵抗の方がずっと大きくなると、電池の両端にはほとんど電圧が掛かっていないのと同様になる。

 この内部抵抗は、理論的で仮想的なものであるが、流す電流を変化させながら電圧を測ってやることで、ちゃんと値を求めることが出来る。だから、ただの言葉遊びというわけでもないのだ。


使えなくなっても電池は終わりではない

 電圧計というのはなるべく対象の回路の電位差に影響を与えないように内部にかなり大きな抵抗を入れてあり、微量の電流しか流さないようにして測るようになっている。そのため、古い電池の電圧を測定しても割りと高い電圧を示すことが多いのだ。バッテリーのチェックをする場合には、ある程度の実用的な電流を流したときに電圧が下がるかどうかを調べた方が良いだろう。

 ちゃんとそこまで考えられているバッテリーチェッカーは、そのようになっている。テスターにわざわざバッテリーチェックモードが付いていたりするのはそのためだ。

 電流を多く食う装置で使えなくなった電池でも、電流を食わない装置では電圧があまり下がらないので、普通に使えることも良くある話である。


電池を混ぜて使うのは良くないのか

 古い電池と新しい電池を一緒に混ぜて使うのは良くないという話がある。その理由を調べてみても、腑に落ちない部分がある。

 電池の並列接続は、たとえ装置の電源を切っていたとしても、電池どうしだけで一つの回路になってしまう。種類の異なる電池を並列にして使うと、使っている化学反応の種類の違いで起電力に差があるため、常に無駄な電流が流れてしまう。それだけではない。起電力の低い方の電池は逆方向に電流が流されることになるので、大きな負担が掛かるばかりか、あるいは予期せぬ反応が起きて事故が起きる可能性もある。

 ところが同じ種類の電池を並列にする場合には、それほど深刻なことは起こらないのではなかろうか。たとえ一方が古くなっていたとしても、内部抵抗が大きくなっているだけである。起電力そのものはどちらも大して変わらないので、電流の逆流までは起こらない気がする。

 ただし、電源をわざわざ並列に設計するということは、それは多くの電流を必要とする回路なのであろう。その一方の電池の内部抵抗が大きくなっていて多くの電流を供給できなくなっているということは、もう一方の新しい方の電池が供給すべき電流の負担がとても大きくなるということだ。どちらがどれだけの電流を流すことになるかは、内部抵抗を入れた回路を考えて計算してやることが出来る。(さあ今こそ、キルヒホッフの法則の出番だ!)

 このような一方の電池への過度の負担によって電池メーカーが推奨する電流値を大きく上回る可能性もあるし、そうなると寿命を大きく縮めるかもしれない。また、回路が要求しているだけの電流を電池が供給することができないと、電池両端の電位差も大きく下がる。どちらにしても、あまり良いことはない。

 我々は普段、電池メーカーが提供してくれている電池の性能を表す資料を調べたり、電池メーカーが推奨している適正な電流値などを意識したりすることはないかも知れない。しかし回路を設計する人は、その辺りまで考慮したほうが良いだろう。

 大電流が必要な回路には大きな電池を使うといい。単3形よりも、単2形、単2形よりも単1形だ。大きな電池は単に寿命が長いだけでなく、流せる電流にも余裕があったりする。


直列ではどうか

 今のは主に並列の話だった。では直列で、古い電池と新しい電池を混ぜて使うことには何か弊害があるだろうか?

 内部抵抗が大きくなった電池をわざわざ回路に挟もうというのだから、それがエネルギーの損失の原因になることは明らかな気がする。しかし、仮想的な概念でしかない内部抵抗は、そこまで当てはめて成り立つほど万能なものだろうか。その辺りは疑問だ。

 ところで、二つの電池を直列にすると、電源電圧が倍になって、回路を流れる電流が倍になるのだった。この時、電池は倍の電流を流さねばならないはずで、なぜ電池は倍も頑張ることになるのだろうか。誰かがこの電池の働きを助けているだろうか?

 実は直列になった電池は何かに励まされて頑張っているのではない。無理をしているのだ。起電力が全体で倍になったので、それに見合う電流を供給しないと電位差が起電力に等しくならず、間に合わせるために休むことなく化学反応を起こして働かねばならないというイメージだ。エネルギーが釣り合うまでは、化学反応が止まないのである。

 では、新しい電池が、働きの悪くなった電池と直列にされたら何が起こるだろうか?新しい電池は働きたくても、古い電池があまり電流を流してくれない。これは新しい電池にとってありがたいことかもしれない。サボれるのだ。その代わり、電流の供給が追いついていないせいで、電源の両端の電位差は下がってしまう。

 電池を幾つも直列にしても、電圧が上がるとは限らないのである。直列の場合には、一番働きの悪い電池に引きずられる。また、新しい電池ばかりを使ったとしても、電池一つが出せる電流の限界を超えるほどの無理な直列をすれば、合計した起電力と同じだけの電位差が保てないことになる。