オームの法則

厳密に成り立つ法則でもないのである。

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電気抵抗

 導線の太さ、長さ、物質の種類によって、電気の流れやすさが違う。電子回路では「流れやすさ」ではなく「流れにくさ」を数値化した「電気抵抗」という概念を導入する。略して「抵抗」と呼ぶことのほうが多い。

 電気抵抗を表すのに「オーム」という単位を使う。1 Ω と書いて 1 オームと読む。1 V の電位差があって、そこに 1 A の電流が流れる時、その電線の電気抵抗は 1 Ωであるとする。電気抵抗の数値が大きくなるほど電流は流れにくくなる。例えば 1 V の電位差があるところに 2 Ωの電気抵抗を持つ電線をつなぐと電流は 0.5 A になる。

 電圧を倍にすると、電流も倍になる。このような関係を式で表したのがオームの法則である。

\[ \begin{align*} V \ =\ R \,I \end{align*} \]
 \( V \)が電圧の値、\( R \)は電気抵抗の値、\( I \)は電流の値を意味している。電気抵抗を R で表すことがよく行われるが、これは Resistance の頭文字である。


電圧降下

 オームの法則は、抵抗に電圧をかけた時にどれくらいの電流が流れることになるかを知るための法則だと言える。これは至って普通の見方だ。

 しかし、もう一つの視点がある。それは、抵抗に電流が流れた時に、どれだけ電圧が下がるかを知るための法則だというものである。電池のプラス極から回路を見ていく時、電流が抵抗を通過するたびに、オームの法則で計算される分だけの電圧が下がっていくという考え方が出来る。「電圧降下」という考え方だ。

 「電流が抵抗を通過することで電圧降下が起きる」という言い方をする。この考え方を身に付けておくと回路を理解しやすい。


抵抗の役割

 抵抗などという、電気の流れを邪魔するものが一体何の役に立つのだろうと思うかも知れないが、抵抗をうまく使うことで、回路を流れる電流量を抑えることが出来る。また、電圧降下の考え方を使って、巧みに回路中の電圧の調整が行えるのである。

 抵抗は、電子回路を設計する上で重要な役割を果たすものである。そのために、色んな抵抗値を持った「抵抗器」という部品が売られている。普通はわざわざ抵抗器などとは呼ばないで、単に「抵抗」と呼ぶことが多い。

 抵抗を使って電源電圧を二つに分けて、望みの電圧を取り出したりもできる。こういうのはあとで実例を見ながらやることにしよう。


常に成り立つわけではない

 オームの法則は常に成り立つというわけではない。この法則からずれる現象も多くあるし、特に半導体部品ではこの法則に従わないような性質のものも多く存在している。モーターもそうだ。

 オームの法則は、単純な導線に電気が流れるときの法則である。意外かも知れないが、厳密に成り立つ科学法則とは違って、割りと現象論的な、近似的に導かれる法則なのである。

 回路に電圧をかけると最初のうちはゆっくりと電気が流れ始めるが、ある程度経った後に、電流が一定に落ち着く。その時に成り立っている法則であると考えていて欲しい。この「ある程度の時間」というのはとても短いので普通は心配する必要はない。それは回路に含まれるコンデンサやコイルの値によっても変わってくるのだが、数ミリ秒とか、数マイクロ秒とか、そんな話である。

 このような短い時間に起きることは「過渡現象(かとげんしょう)」と言って、スイッチをオン・オフした瞬間のことを考えると必要になってくる場合がある。高周波のデジタル信号を扱う時もそうだ。これはもっとあとの記事で説明しよう。

 さて、オームの法則が近似的に導かれる法則だということについて、それがどういうことなのか簡単に説明しておこう。電位差があるということはそこには電場がある。もちろん電子が物質中を流れるときにもそこには電場があり、電子は電場によって加速されて運動エネルギーを得ることになる。物質を構成する原子が綺麗に並んでいれば、電子は割りとスムーズに流れるのだが、大抵は結晶のわずかな乱れによって流れが妨げられる。電子は結晶構造との衝突を頻繁に起こしながら流れるわけだ。その時、せっかく加速して得た運動エネルギーを失ってしまう。そのエネルギーは物質の原子を揺らすのに使われる。すなわち、熱に変わるのである。

 電圧を強くすれば電子が加速される勢いは増すのだが、それに合わせて衝突の頻度も増すので、電子の平均速度はあまり上がらず、ある一定のところに落ち着く。ちょうどそれが、電圧と比例していることが導かれるのである。

 このようなイメージが分かっていると、電子回路で重要な二つのことが理解できる。

 まずひとつ。抵抗は、熱くなるに従って抵抗値が増すこと。物質の熱運動が激しくなることで結晶の並びが乱れ、電子との衝突の機会が増すためだ。抵抗が増したと考えることでオームの法則は依然として成り立っていると言えるかも知れないが、結果だけを見るならば、電圧を倍にしても電流は倍にならなかったりもするわけだ。

 しかし半導体の場合には逆の現象が起こる。半導体は、名前の通り、もともと電流をあまり流さないのである。これはもともとの自由電子が少ないせいなのだが、それが色々と役に立つのだ。温度が上がることで束縛されていた電子がエネルギーを得て、自由電子になる。その数がどっと増えるので、電流が流れやすくなる。要するに、抵抗が減るのだ。

 これらは回路設計をする上で考慮しなくてはならない場面がある。気温が変化することでラジオの音量が勝手に変わったり、音に歪みが出るのは嫌だろう。電流の変化を補正して不安定さを抑えるような回路を付け加える必要があったりする。

 逆にこれらの性質を積極的に利用して温度センサーにすることもある。そのために使う「サーミスタ」と呼ばれる電子部品もある。これは温度による抵抗の変化が特に大きな物質で作ってあり、温度が上がると抵抗が増すものもあれば、逆に抵抗が減るものもある。


電力

 さて、まだ話していない、電子回路で重要なもう一つの性質とは何だろうか。

 それは、電位差を駆け下るときに電子が得た運動エネルギーは、全て熱として消費されるということだ。電流は一定の速度で落ち着いているのだから、余分な速度は要らない。加速で得た余分なエネルギーは全て物質との衝突で失われる運命である。

 それは電位差に比例するし、電流にも比例する。式で表すと次のような関係だ。

\[ \begin{align*} P \ =\ V \, I \end{align*} \]
 P は電力を意味しており、Power の頭文字だ。電力の単位はワットである。1 W と書いて 1 ワットと読む。

 抵抗は電流や電圧を制御するには便利だが、エネルギーを熱に変えて失わせてしまうのだ。

 オームの法則と組み合わせれば次のような関係が導かれる。

\[ \begin{align*} P \ =\ R \, I^2 \ =\ \frac{V^2}{R} \end{align*} \]
 電流が増えても、電圧が増えても、消費電力はその 2 乗で増すことになるのである。

 ここはあまり難しく考えなくてもいい。抵抗値が一定なら、電圧を上げれば比例して電流も上がるわけで、当然両方の効果が電力に一度に影響してくるというだけのことである。