俺のキューティ・ハニー

いや、俺のじゃないんだが。


 ああ、どいつもこいつも、 「21世紀だ! 鉄腕アトムだ、ドラえもんだ!」と バカの一つ覚えみたいに叫びやがって。  鉄腕アトムの誕生日がもうすぐ来るだって?  作者の設定が甘かっただけじゃねぇか。  だいたい、本当に鉄腕アトムと友達になりたいと 思う人間がどれほどいるのだろうか?  まぁ、軍事関係者は喉から手が出るほど欲しいだろうが。  アトムから「力」を取ったとき、何が残る?  それほどアトムの性格が魅力的か?

 ホンダなどの就職の面接で 「鉄腕アトムのようなロボットを作りたいんです」 なんて言うやつがいたら、もう白々しくて涙でてくらぁ。

 そこで本題なのだが、 どうして誰も「キューティ・ハニー」を話題にしないのだ!?

 最近の若者は「キューティ・ハニー F」のことだと思ってるかも知れないな。  あのくだらないリメイク版については何も言うことはない。  いや、少しだけ言わせてもらおう。  あれだけ設定を変えたら面白さが全然ないだろうが!  キューティ・ハニーの何を見ていたのだ!  何が面白いと思ってリメイクしたのだ?  勘違いも甚だしい!!  (しかし俺は少数派なのかも知れない。)

 俺が言いたいのはテレビ版の昔の「キューティ・ハニー」だ。  小学生の頃、低俗なやつらは、 「お前、キューティ・ハニー見てるだろ」 とか言って同級生をからかったものだ。  「こいつ、キューティ・ハニー見てたぞ!!」 なんて言いふらされれば、クラスの女子からは 「やらしいー」 なんて見方をされてしまうわけだ。

 当時、小学生だった俺はそんな状況を見ながら  「お前ら、何を勘違いしてやがるんだ?  そんな見方しか出来ないお前らの方がよっぽどやらしいんじゃないか?  見るべきところを全く外してるぞ。」  と心の中で静かに思っていた。

 ハニーが変身するときに、一瞬裸になるところなどにはまったく興味がなかった。  しかし、あれは「空中元素固定装置」を使っていることのリアルな演出として 決して外せない部分であったのだ!  そんなことで騒いでるやつらはバカじゃないのか、と本気で憤っていた。

 俺が感心していたのは、むしろハニーが、 言い寄る男どもをうまくあしらう賢さだ。  リメイク版では「かわいいハニー、か弱いハニー、女らしいハニー」 が表現されていて、あのわざとらしさには嫌悪感を持ったものだ。

ああ、知的でかっこいいハニーお姉さま!!!

 しかし、本当の魅力はその裏にある。  彼女が表には出さない深い悲しみを抱えているということだ。  自分が、如月博士の実の娘だと信じていたのに、 なんと彼女は博士が作り出したアンドロイドだったのだ。

 ああ、博士!  どうして「娘」なんですか。  どうして変身機能を取り付けたんですか!  マニア過ぎます、博士!!  俺たちの憧れです。  そんな博士になりたくて勉強してきました!  いや、そんなことはどうでもいい。

 その事実を知りながらも、父を殺した組織との戦いを決意するハニー。  泣けるではないか!  彼女は博士の全てを注ぎ込んだ最高の作品だったのだ。  未完成ですぐに人類に反乱を起こすような海外映画のロボットとは全然違う。  人の心が分かる。  人の悲しみを知っているのだ。

 俺はあの作品への偏見を解きたいと願う。  見た目に騙されちゃだめだ。  ああいうロボット作りを目指さないと駄目なのだ!!

 キューティ・ハニーという作品の魅力については まだ全然語り足りないが、 とりあえず話がまとまってしまったのでこれくらいにしておこう。

 アラレちゃんや、R・田中一郎やドラえもんみたいな 欠陥ロボットも悪くないのだが、現実にはメチャクチャ危険だよな。  キャティとか、ミソッカスとか、その他諸々、 そういうマニアックな話は今回は無しだ。

 とにかく、工学系の若者たちよ!  人々の上っ面の議論や流行に惑わされないで、 そういう素晴らしいロボット作りをこっそりと目指して欲しい。

 最後に言っておく。  アニメの女の子のシャワーシーンで喜んでいるようなやつは本物とは認めん!!  そういうやつらが目立ったせいでオタクは迫害され、白眼視され、駆逐されてきたのだ。  「世の人々はオタクがそういうものを見て喜んでいると甚だしい誤解をしている!」  以前はそう言えた時代もあった。  しかし実際に勘違いしたアニメばかりが世に増えてしまい、なぜか売れている。  所詮、俺たちは少数派に過ぎなかったのか!?


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