サイコバリア

笹岡の小さな反抗


大胆な作戦

 俺と笹岡は休み時間に廊下で話し合っていた。  俺たち3年生は1年とは別校舎で、 明石さんや宮内さんの教室はちょうど向かい側にある。

 廊下の窓から彼女らの教室を見下ろしながら、 笹岡がこれからの計画を俺に話した。

 なんと、笹岡はこれから宮内さんの心の中を 読むのだという。  大それた事を考えるやつだ。  俺なら畏れ多くて絶対にやろうとは思わない。

 「気付かれんように読まんとな。」

 このコソコソしてる辺りが憎めない。

 俺は不安ながらも興味深く見ていた。  彼のすることに反対するつもりはない。  ただ俺には勇気がないだけなのだ。

 目を閉じて口をつぐむ。  読心の体勢に入ったようだ。

 「ん? 何? 嘘!?」

 笹岡が予期せぬ事態に慌て始めた。

 「どうしたん? 気付かれた?」

 「読めん・・・。 防がれた。」

 「なにそれ? どういうこと?」

 彼は深刻な顔で、相当困惑しているようだった。

 「一瞬、気付かれてこっち向いたのが分かったけど、 その後、すぐ読めなくなった。 真っ白だ。」

 「真っ白って何?」

 「読もうとしても何も見えない。 真っ白だ。 何も考えてない!」

 「そんなバカな」

 真っ白と言われても、俺にはその感覚が全く理解できないのだが、 とにかく「能力者」自身の表現によると 「真っ白」なのだそうだ。

 「おい、そんなこと出来るのか?!」

 笹岡は取り乱して俺に聞く。  読心も出来ない俺に、それを防ぐ方法があるかどうかなんて 分かるはずもない。

 「そんな方法知っていたらとっくに使ってるよ。」

 俺たちは本当に予期せぬ展開の中にいた。  俺はとにかくすげーと思った。  上には上がいる。  そんな技があること自体、この瞬間まで知らなかったのだ。

 「精神障壁・・・サイコバリヤーってやつか。 かっこいい。」

 しかし俺には使えるはずはないだろう。  あの笹岡でさえ知らなかった技なのだから。  宮内さん、すげーよ。

 「くそー、どうやるんだよ? 何か知らないか?」

 その日、笹岡は情けない顔で俺に何度も聞いて来た。  俺がオカルトに詳しいので何かヒントを 知っているんじゃないかと思ったのだろう。

 しかし俺も、こんなものはSFの世界だけのことだと思っていた。

 笹岡は絶対的な能力(ちから)の差を見せ付けられて 相当なショックだったようだ。  めちゃくちゃ悔しがっていた。


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