再会

 ごめん、もう信じてないんだ・・・


 疾風怒濤の時代は過ぎた。

 もういつのことだったか、私も忘れてしまった。

 どういう経緯だったかも忘れてしまった。

 とにかく、私はある建物の中で、もういちど村上さんに出会った。

 大学を卒業した後だったか、前だったか、やはり思い出せない。

 当時の関わりのあったほとんどの人たちとは疎遠になり、 ある人は失踪したままだった。
 私はもう、どうでもいいと思っていた。

 夕暮れで、少し肌寒かった。  暗い階段を登ったところの、東向きの窓からの薄明かりの差す廊下で、
何年かぶりに彼と会った。

 当時の思い出が蘇って、少し嬉しくなったのは確かだ。

 「何か新しい話はありますか?

 近況を述べ合った後、私は当時のように問いかけた。
 しかし心はもう冷めていて、また今度はどんな法螺を吹くのだろうかと、
彼を試している自分に気付いていた。

 しかし彼は当時のような熱意のこもった目で、静かに話し始めた。

 「すごいことです。 日本は滅びます。 世界の中で真っ先に。

 またまた、そんな、ありえない話を・・・。
 私はたとえ世界が滅んでも日本だけは生き残るくらいに思ってるのに。

 「いや、そんなことはないでしょう。 一体何が起こるというんです?

 「それについては話せません。 でも確実にそうなります。

 ほら、来たよ。 どこまで本当だか分かったもんじゃない。
 詳しく追求して聞く気も起きなかった。  「どうして・・・それは日本だけですか?

 「まず日本からです。
 世界が見守る中で、日本は犠牲の民族だと言われるようになるでしょう。

 日本にだけ起こる大破滅を色々と想像しようとしたが、無理だった。
 私はそれが本当になるかどうか、心の中にいつまでも覚えていてやろうと思った。
 そしていつの日か笑い飛ばしてやろうと心に思った。

 「他には、この先、何か起きますか?

 「私は裏切られます。 悪人だと看做されるようになるでしょう。

 被害妄想なのかな?
 すでにそう看做されている兆候はあるんだから、今更な話だよな。

 「ふーむ。 何かしようっていうんですか?

 私は何のことを話しているのだかさっぱり想像がつかないといった態度を取った。
 私のことかな、見抜かれてるかな、と少しだけ思いながら。

 私は失望しながら家に帰った。
 何も面白くもない話。  やはり彼は妄想気味の法螺吹き男。

 こんな男の荒唐無稽な話を信じて振り回されていたんだ。


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