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運動方程式

これこそが本物のニュートン力学である。
作成:2006/4/25

初めの話では加速度をaと表してF=maという式を導いたが,大学ではこの式を微分を使って, 数式 と表すのが普通である.これを「ニュートンの運動方程式」と呼ぶ.この書き方の方が深い意味を含んでいて状況を正しく記述できる.一度これに慣れたらもう戻れないほど便利なのだ.力学が誕生したニュートンの時代からこの方法は存在する.微分というのはニュートンやライプニッツなどが力学を正確に書き表すために独自に編み出した方法だからである.

この先まだしばらくは微分の知識を必要とすることはないが,物理では非常によく使う大切な概念なのでここでごく簡単に説明しておこう.少しずつ慣れておいた方がいい.


微分の考え方

まず,速さとは何であろうか.簡単に言えば物体が動いた距離をそれに掛かった時間で割ったものである.しかし長い距離を移動する間,ずっと同じ速さだとは限らない.速さは変化するのが普通である.すると「今の速さ」は幾つだということが気になり始める.しかしどう考えたらいいのだろう.「今この瞬間の速さ」と言われても,ある瞬間には物体はただそこにあるだけであって動いてはいない.

いや,本当に動いていないわけではない.「ほとんど動いていない」だけだ.ごく短い一瞬の時間内に,ごくわずかに動いた距離さえ分かれば速さは計算できる.無限に小さい時間間隔を考えて計算した値はほとんど「その瞬間の速さ」と呼んで差し支えがない.ごく短い時間内では速さだってほとんど変化しないのだから気にすることではない.

つまりごく短い時間間隔Δt,その間に動いたごく短い距離Δx を考えてΔx/Δtという量を作り,Δtを無限に 0 にまで近付けたときのこの量の値を瞬間の速さvであると定義して,次のような記号で表すのである. 数式 0 で割り算することは数学的に矛盾が出るので反則になるのだが,分母の値を徐々に 0 に近付けて,その値がどうなるかを考えることは許されている.これが微分だ.


微分の応用

この考えを使って,もう一度力積の話をやり直してみよう.力の大きさと時間を掛けたものを力積と呼ぶのだったが,以前のやり方では物体に加える力Fの大きさがΔt秒間ずっと変わらず一定だという仮定の中で計算していたことになる.そんな珍しい状況は受験問題にはよく出てくるが現実には滅多にないことだ.普通は一瞬のパンチにしても,徐々に力が加わり,徐々に力が抜けて行くものだ.

このような現実的な場面にもちゃんとあてはめることのできる議論をするにはどうしたらよいだろうか.ここで先ほどの「瞬間の速さ」と同じように,微小時間の考えを使うのである.本当に短い一瞬の時間Δtだけに限れば,その間の力Fはほとんど一定だと見なせる.そのごく短時間の力積をF Δtと表そう.その力積によって運動量はわずかに変化するから,それをΔpと書こう.つまり,F Δt=Δpが言える.式の形は前に出てきたのと同じだが,Δtをとても短い時間だと仮定しているところだけが違う.これを変形してF=Δp/Δtと書き,Δtを無限小に近付けた式は, 数式 だと言える.力とは運動量の時間的な変化率であるという意味だ.ニュートンの運動方程式をこのように書き表すこともあるので心のどこかに留めておいてもらいたい.

しかし運動量が変化するのは,普通は物体の速度変化だけが原因である.物体が壊れなければ質量mの値が勝手に変化する事はないからである.それで運動量の変化をΔp=m Δvと書くことができるだろう.つまり,F Δt=m Δvであり,変形すればF=m Δv/Δtであり,無限小の時間を考えることにすれば, 数式 という式が出来あがる.vは移動距離を時間で微分したものであり,ここではそれがさらに微分されているのだから, 数式 と書けるのである.この式は加速度が一定でない場合にも使える.力が変化するような場面であっても,そのどの瞬間にも当てはめて使える式だということだ.

加速度を一定値aで表す幼いやり方は早い内に卒業しておこう.何しろ,力学は生まれた時から微分の考え方を使ってきたのだから.



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