電流は結果である

電線を通ってエネルギーや情報を伝えているのは電子ではない。

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 長い長い電線の途中の所々に幾つかの豆電球を付けて、そこに電池をつないだら、一体どこから先に点灯するのだろう?という質問が良くある。

 そういう疑問を持つ人は、電気の不思議について理解し始めることが出来た人であろう。いいことだ。しかしこの疑問を何十年も解決できないでいる人は、電磁気学を勉強するという選択肢に気付かないでいたか、その努力を怠った人であるかも知れない。

 電子は結果として流れるだけである。そして豆電球の点灯に必要なのは、その電子の移動のエネルギーである。

 電子を駆動するのは電位差であり、電位に差があると言うことは傾きがあるということである。電位の傾きとは電場のことである。要するに電子は電場に応じて動くという、良く知られた事実のことを言っているだけだから混乱しないでもらいたい。

 電場の変化は電線中を伝わる。電場の変化とは、取りも直さず電磁波である。つまり、電磁波が電線中を伝わると言ってもよい。物質とのやり取りがあるので、その電磁波は全体的に見れば、真空中の電磁波よりも遅く伝わるように見えるだろう。なぜ電磁波が電線に沿って曲がって伝わるのかという点については私も気になるので、いつか手が空いた時にうまい説明を考える事にしよう。

 そういう目で見ると、電力の送電線も通信用のメタルケーブルも、結局は電磁波を通すためにあるデバイスだという、少し変わった見方が出来る。

 送電線の場合、最終的に、末端で電子が揺れるエネルギーを必要としているわけだ。では通信線の場合はどうか。これも末端での電子の動きを検知して信号として利用している。しかし出発点にあった電子が高速で流れてきたわけではない。電子の実際の速度はアリが歩くほどに遅いのだ。この理由については、いつか量子力学か統計力学のページで説明しよう。

 こうしてみると、通信用のメタルケーブルというのは光ファイバーと同じようなものであって、結局はどちらも内部に電磁波を通すために存在しているんだなぁ、と思えてくる。ADSL より光回線の方が通信速度が速い理由は「光ファイバーという新しい原理のものを使っているから」とか「情報を光速度で伝えられるから」っていうのではなくて、「光という周波数のより高い電磁波を通せるために、そこに多くの情報を詰め込むことが出来るから」というだけの違いか。

 すると、現在、電線で送電できているように、光ファイバーを使って送電することだって出来るんじゃないか、という逆の発想が出てくる。検索してみるとやはり同じことを考えている人はいるものだ。「光ファイバー送電」で検索してみた。(嬉しくて勝手にリンクさせてもらった。)

http://blog.so-net.ne.jp/taka_taka/2006-08-25
http://blog.icy-metropolis.jp/200503/article_9.html

 上に挙げたのは、言っちゃあ申し訳ないが、素人の思いつきをメモした程度のものだ。いや、私のこの記事も人のことを言えたレベルのものではないが・・・。専門家はこれに関して何か言っていないのだろうか。

 さらに調べてみると、すでに実用的な研究も進んでいるようだ。検索ワードを変えてみた方がいい。「光ファイバーエネルギー伝送」で検索してみると色々見付かるだろう。

 しかし、どうやらまだ溶接などに用途を限定した話のようだ。なるほど、レーザーを使うのか。もっともな話だ。そう言えば、こういう話題はかなり前から聞いてはいたように思う。ただ、これが現在の「送電」と原理的に同じ意味のことをしているのだという結びつきが頭の中に出来ていなかっただけだ。