静電場の満たす方程式

多分、高校生でも分かる・・はずなのだが、
うまく伝えられるかどうか。

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ガウスの法則

 電荷がその周囲に作る電場を表す式は決まった。これで何か面白いことができるのだろうか?見ているだけでは何も分からない。天才はいつでも発想を変えていじり回すものである。

 電荷の周りをぐるっと全方位取り囲んでやることを考える。どんな形で取り囲んでも構わない。その取り囲んだ面の上で電場を測って、これを面の全体で合計したらどうなるだろう?
大きく囲んでやれば電荷からの距離が遠くなるので測定される電場は小さくなるが、その分だけ取り囲む面積が増える。ガウスはこれが一定値になるだろうと予想した。気をつけることはこの電場を測る時に、面に対して垂直方向についてだけ測ることだ。

 これを数式で表せば次のようになる。

\[ \begin{align*} \int \Vec{E} \cdot \Vec{n} \ \diff S \end{align*} \]
 ここで\( \Vec{n} \)は電荷を取り囲んだ面に垂直な単位ベクトルであって、これと\( \Vec{E} \)との内積を取れば面に対しての垂直方向の電場を測ったことになる。これに電荷を取り囲んだ面の微小な部分の表面積\( \diff S \)を掛け合わせたものを全表面積について足し合わせてやるわけだ。

 私の解説では厳密な証明はしない。代わりに思い切り簡単な場合についてだけ計算して雰囲気をつかめるようにする。一番簡単なのは電荷\( q \)を半径\( r \)の球で取り囲むことを考えた場合である。こうすると取り囲んだ表面上では電荷からの距離は常に\( r \)であって、電場の大きさは一定値\( \frac{1}{4\pi\varepsilon_0} \frac{q}{r^2} \)である。電場の向きを気にする必要もない。電場の向きは電荷を中心にした放射状であって、常に取り囲んだ球面に対して垂直である。よって内積を計算するまでもない。つまり、半径\( r \)の球殻の全表面積と半径\( r \)の地点での電場の大きさを掛けてやればこの計算の答えは求まる。

\[ \begin{align*} \int \Vec{E} \cdot \Vec{n}\ \diff S \ &=\ |\Vec{E}| \ S \\ &=\ \frac{1}{4\pi \varepsilon\sub{0}} \frac{q}{r^2} \times 4\pi r^2 \\ &=\ q/\varepsilon\sub{0} \end{align*} \]
 やはり、囲んだ球面の半径によらずに一定の値になる。あまりにもすっきりした答えだが、これは偶然ではない。騙されてはいけない。これは自然の神秘などというものではなく、こうなるように仕組んだ人間の小細工なのだ。初めに電荷と電荷の間に働く力を定義した時に比例定数に\( 1/4\pi \)が入っていたのはこの答えがすっきりしたものになるようにするためだったのである。

 ガウスの法則と言うのは、ここで計算したような球殻の場合に限らず、どんな形で取り囲もうともこの答えが常に同じになりますよ、というものである。この法則の背景には、電荷から「電気力線」なるものが出ていて、電場の大きさはその電気力線の密度で決まっているのだという考えがある。電場と微小な面積をかけたものは、すなわち電気力線の密度と面積をかけたものであって、微小面積を通り抜ける電気力線の本数を表している。これを全方位について積分するということは取り囲んだ面を通り抜けてくる全ての電気力線の本数を数えることに相当する。どんな形で取り囲もうとも、電気力線はいつかその表面を抜けて外へ出てくるはずである。その電気力線の本数はその中にある電荷の大きさで決まるはずだというわけだ。

 「電気力線」などというものが実在するかどうかだが、この考えはもともと、ファラデーの思想であった。そしてその考えはガウスの法則を立てるのに役に立ったわけだが、法則が見つかってしまえば数学的には特になければならないものではない。単なる考えやすくするだけの概念である。

 この法則を利用していろいろな場合について電場を簡単に求めるという応用ができるわけだが、これについて詳しく知りたければ教科書がいくらでもあるので私はこれ以上の説明の必要を感じない。自然の本質を理解するために必要な話だということはないのでさっさと先に進むことにしよう。


ガウスの法則(微分形)

 上で説明した法則は「積分形のガウスの法則」と呼ばれているものである。この結果に「ガウスの定理」と呼ばれる数学の公式を使うことによってこの法則を微分の形で表すことができるようになる。本当に欲しいのはそっちの法則なのだ。これからその求め方を説明しよう。

 ガウスの定理は

\[ \begin{align*} \int \Vec{E} \cdot \Vec{n}\ \diff S \ =\ \int \mathrm{div} \Vec{E}\ \diff V \end{align*} \]
という式で表される。閉じた面の表面の積分を、閉じた面で取り囲まれた全体積についての積分に変換できるという便利な公式である。「ガウスの法則」と「ガウスの定理」をしっかりと区別してもらいたい。ガウスの定理は純粋に数学的に成り立つ公式であるが、物理的なイメージも描きやすい。右辺に含まれる\( \mathrm{div} \Vec{E} \)というのは単位体積あたりから湧き出してくる電場の大きさを表している。その合計を積分してやれば、結局囲まれた面の表面全体から湧き出してくる量と等しいというわけだ。そんな気がするだろう。詳しくは補習の部屋を用意したので詳しく知りたい人とはそちらで議論することにしよう。

 さて、先ほど説明したガウスの法則は\( \int \Vec{E} \cdot \Vec{n}\ \diff S = q/\varepsilon\sub{0} \)ということだったが、この右辺を電荷の密度\( \rho \)で表してやることにすれば、

\[ \begin{align*} \int \Vec{E} \cdot \Vec{n}\ \diff S = \frac{1}{\varepsilon\sub{0}} \int \rho\ \diff V \end{align*} \]
と書ける。これとガウスの定理を組み合わせて見比べてやれば
\[ \begin{align*} \mathrm{div} \Vec{E} = \frac{\rho}{\varepsilon\sub{0}} \end{align*} \]
が成り立つことがすぐに分かるだろう。これが「微分形のガウスの法則」なのだ。


エネルギー保存の条件

 次に電場について全く別のアプローチをしてみよう。電場の中で電荷を移動させた時に必要となるエネルギーについて考える。力学のページの中で説明したように、エネルギーの定義は「力と、力を働かせた方向へ動いた距離を掛け合わせたもの」であった。これは力を表すベクトルと距離を表すベクトルの内積をとってやれば計算できる量である。電場から受ける力は\( \Vec{F} = q \Vec{E} \)で表されるので、移動した微小距離のベクトルを\( \diff \Vec{s} \)とおいて内積をとり、移動する経路に沿って積分してやれば電場の中を移動する時に必要なエネルギーが求められる。
\[ \begin{align*} \int \Vec{F} \cdot \diff \Vec{s} = q \int \Vec{E} \cdot \diff \Vec{s} \end{align*} \]
 ここで、どんな経路をとってもいから電場の中をぐるーっと一周した後、最終的にもとの位置に戻って来た場合にはどうなるだろうかと考える。エネルギーの収支が 0 にならなければおかしなことになるということが分かるだろうか。もし 0 以外ならば、その経路に沿って(あるいは逆周りに)電荷を走らせてやるだけでいくらでもエネルギーを得ることができることになる。そんな簡単なことでエネルギーが作り出せるというのならとっくに実用化されている。そういうわけで、静電場は次の条件を満たしているはずだ。
\[ \begin{align*} \oint \Vec{E} \cdot \diff \Vec{s} = 0 \end{align*} \]
 ここで使った\( \oint \)という積分記号は、ぐるっと輪になったコースを1周積分したことを表すもので、たまに使われることがある。普通ならこの条件が分かったところで喜んで満足してしまうところなのだが、さらにこの条件を満たすためには電場はどんな条件を満たしているべきかということを考えることができる。つまり、電場が全体として上の条件を満たしていることは分かったが、そのためには電場はそれぞれの点でどのような条件を満たしていればよいのか、ということを考えることが出来るというのだ。こんなことは凡人である私には思いつくはずもない。

 ストークスの定理という数学公式を使う。この定理がいつも電磁気学の教科書に説明してあるからといって物理的な現象から導かれるものだと勘違いしてはいけない。この証明は物理とは関係なく成り立つものである。よってここではこの証明はせずに使わせてもらう。これはベクトルの線積分を面積分に変換するのに便利な公式なのである。雰囲気はガウスの定理と似ている。これも補習のページを用意しておいたので詳しくはそちらで議論しよう。本質ではないところで脇道にそれると分かりにくくなるからな。

 ストークスの定理を数式で書くと、

\[ \begin{align*} \oint \Vec{E} \cdot \diff \Vec{s} = \int \mathrm{rot} \Vec{E} \cdot \Vec{n}\ \diff S \end{align*} \]
と書ける。この公式を使うと先ほどの条件は、
\[ \begin{align*} \int \mathrm{rot} \Vec{E} \cdot \Vec{n}\ \diff S = 0 \end{align*} \]
ということになるが、これがどのような時にも成り立っているためには、その積分の中身が常に 0 であることが要求される。従って、静電場の満たすべきもう一つの条件は、
\[ \begin{align*} \mathrm{rot} \Vec{E} = 0 \end{align*} \]
であることが分かる。本質だけ抜き出せば電磁気学ってあまりにも簡単だろう?