微分方程式の基礎知識

勉強したからといって解けるとは限らない。

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概要

 未知関数の微分を含む等式があって、その未知の関数がどんな形であればその等式を満たすことができるのかをこれから考えようとするとき、その等式のことを「微分方程式」と呼ぶ。

 「微分方程式を解く」というのは条件に合う未知関数の具体的な形を見つけることである。

 条件に合う関数の形は一種類ではなく、複数の候補が出てくることも多い。任意定数を含む形で書かれたものを「一般解」と呼ぶ。この任意定数の部分に具体的な数値を代入したものはもちろんそれも解であり、これを「特殊解」と呼ぶ。一般解に含まれないものを「特異解」と呼ぶ。

 微分方程式のタイプは幾つでもある。偏微分の場合もあるし、常微分の場合もある。色んな形の微分方程式を幾らでも考え出すことができる。それらの全てがいつも一定の手順で解けるという楽なことにはなっていない。

 その代わり、「この形の微分方程式を解くにはこの方法が使える」といったような多数の公式が存在している。どの公式に当てはまるのかを賢く見定めて、その公式に従って解くのが普通である。

 なぜ「賢く見定める」必要があるかというと、時々複数の公式に当てはまることがあるからだ。なるべく簡単に解ける方の公式を選ばないと余計な苦労をしてしまい、あとで悔しかったり恥ずかしくなったりしてしまう。

 複雑な公式に当てはめて苦労して解いた末、「どうや!?」と満足気な顔をしていると、 「それって変数分離形だよね・・・?」などというツッコミが入ったりして、 「えええ〜!!」っと叫んだ後に消え入りたくなるのである。  変数分離形というのは次回やるつもりだが、初歩の初歩である。
 あまりに複雑な形の微分方程式には解法がまだ見つかっていないこともある。特殊すぎてこれまで誰もそれを解くことに関心を示さなかったというわけだ。しかしよく出てくる形の微分方程式はすでに徹底的に研究されているから、あまり心配しなくてもいい。困るのは、自分が立ち向かうことになった式を解くための公式が、すでにこの世に存在しているものなのかどうかの判断が難しいところだ。

 いざとなれば、コンピュータの不屈の計算力を利用して、式に当てはまる関数の形がどんなものかを無理やり探し出すという方法もある。実際にその方法でしか解けないという方程式もあるのだ。

 解の形をグラフに描いて示すことはできても、高校までに習うような初歩的な関数を使った単純な組み合わせでは表せないということも良くある。そういう関数の中で利用価値の高いものには一つ一つ名前が付けられている。そのような関数をひっくるめて「特殊関数」と呼ぶことがある。

 特殊関数は微分方程式を使って定義されていることが多い。「この微分方程式の解を**関数と呼ぶ」などのような定義がよく見られる。そうすることで最も簡潔に言い表せるからだ。しかし微分方程式を使って定義されるものばかりとは限らない。積分の解として定義されるものも特殊関数の仲間に含まれたりする。

注:  高校までに習う関数を「初等関数」と呼び、それ以外を(あまり使わないが)「高等関数」と呼ぶことがある。  「特殊関数」というのはこのような分類とは関係がなくて、実ははっきりした定義はないのである。
 特殊関数はわざわざ名前が付けられているだけあって良く研究されており、面白い性質を持つものも多い。

 以上が微分方程式について予め知っておいたほうが良いと思う基礎知識である。ここからは、解き方が簡単なものから順に紹介してゆくことにしようと思う。しかし全てを紹介し切ることは無理だろうと思う。(いや、無理だと言い切れる自信すら無い。それほど底知れない。)


腕慣らし

 最も単純な微分方程式というのは例えば次のような形のものだろう。
\[ \begin{align*} f'(x) \ =\ 3x^2 + 4x + 5 \tag{1} \end{align*} \]
 \( f'(x) \)というのは関数\( f(x) \)を微分したものであって、「この条件に合う\( f(x) \)はな〜んだ?」と問われれば、高校生でも答えることができる。微分した結果として右辺のようになるのだから、積分してやればいい。
\[ \begin{align*} f(x) \ =\ x^3 + 2x^2 + 5x + C \tag{2} \end{align*} \]
 積分定数の\( C \)を付けておくことを忘れてはいけない。定数\( C \)が幾つであろうとも (1) 式は成り立つのだから (2) 式は (1) 式の一般解である。\( C \)が幾つであるかを定めるにはもう少し情報が必要で、それは例えば\( f(0) = 4 \)のような形で提供される。この条件に合うのは\( C = 4 \)であろう。

 このように任意定数の値を定めるためのヒントとなる条件のことを、文脈に応じて「初期条件」と呼んだり「境界条件」と呼んだりするのである。

 今の例は簡単すぎたかも知れない。しかし、たとえ三角関数や指数関数や対数関数が含まれていても同じことである。複雑になり過ぎると解くことが出来ない場合もあるだろうが、原理的には「積分しさえすればいい」のである。

 積分しただけで解決するような問題はこれ以上はやらない。次回はもう少し違った意味で複雑な方程式を解くための知識を紹介しよう。