物理を解説 ♪
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ブラックホールの種類

数えるほどしかないとは
聞いていたけれど……。
作成:2009/11/10

有名な解

シュバルツシルト解の他にはどんなタイプの厳密解が見つかっているのだろう.このサイトでどこまでやれるのか見当を付ける為にちょっと調べてみたので,それをまとめておこう.

呼び名発見年説明
シュバルツシルト解1916ドイツの天文学者カール・シュバルツシルトが従軍中に戦場で解いた解.球対称で静的という最も単純ではあるが,基本的で重要な解.
ライスナー・ノルドシュトロム解1916,
1918
球対称で静的である点はシュバルツシルト解と同じだが,天体が電荷を持っているという点が違う.ドイツのハンス・ライスナーと,フィンランドのグンナー・ノルドシュトルムによって独立して解かれた.
ライスナーが先に点電荷の場合について解き,ノルドシュトロムが球対称の電荷分布に拡張したそうだが,外部解にはどちらも違いがないようだ.
カー解1963回転する天体についての解.角運動量が 0 になるとシュバルツシルト解と一致する.ニュージーランドの数学者ロイ・カーによって解かれた.
カー・ニューマン解1965カー解の拡張で,電荷を持つ場合の解.アメリカのエズラ・ニューマンによって解かれた.

軸対称の定常解はこの形に限られるという「ブラックホール唯一性定理」というものがある.つまり,どのブラックホールもやがてはこの解が示す形に落ち着いてしまうだろうと考えられる・・・らしい.

基本的なのはこれくらいか・・・.次のような少し特殊なのもある.

呼び名発見年説明
ワイル解1917球対称ではなく,軸対称の解.回転はしていない.
特殊解ということなので,軸対称の場合の全てを言い尽くしたものではないのだろう.確かに軸対称ともなると色々な形が有りすぎるように思う.平易な説明が見当たらないところをみると,素人に一言で説明できないような制限があるのだろう.
冨松・佐藤解1972ワイル解の回転バージョン.
特異点が事象の地平面の外に剥き出しになるという特徴あり.T-S解,トミマツ・サトウ解とも表記される.

宇宙全体を表すような,宇宙論的な解も色々とあるようだ.

呼び名発見年説明
ド・ジッター解1917物質が全く存在しない場合の解で,宇宙項が正の値を持つ.当初は定常宇宙を表す解だと解釈され,やがて物理的には無意味だとされた時期もある.最近では宇宙の最初期の膨張を表すのに使えるのではないかとも考えられている.
フリードマン・ロバートソン・ウォーカー解1922一様,等方の物質分布の場合の解で,宇宙の膨張,収縮を表す.
ゲーデル解1949回転する一様な粒子を仮定した解.宇宙項を入れている.時間が輪を描いており,過去と未来が繋がっている.

調べたらまだまだ出てくるなぁ.これ以外にも幾つかあったのだけど,ナット解とかタウブ解だとかバイジャ解とか,名前だけしか分からなかったので,本当に厳密解なのか,かなり特殊な条件が付いているのか,同じ解の別表現なのか,ひょっとして近似解であるのかも良く分からない.原論文にあたるだけの力はないのでこれくらいで勘弁を.まぁ,有名なのはこれくらいだということだ.

数えるほどしかないとか聞いていたが,思ったよりは沢山あるじゃないか.


予告

カー解の導き方やその意味の解説に手を出すのは私の力ではまだまだ無理そうだ.しかしライスナー・ノルドシュトロム解なら手が届きそうな気がする.

ところで,どうして時空の歪みに電荷の有無が関係してくるんだ電荷がエネルギーを持つから,それが質量と同じく時空を歪める効果を持つという解釈でいいのか.

ああ,そう言えば,まだ一般相対論と電磁気学との関係を全く論じていないのだった.そこに色々と秘密が隠されていそうだ.ノルドシュトロム解の解法を説明するためには,その前にその辺りをやっておくことが必要だろう.


ちょっと気になる疑問

さらに気になることが出てきてしまった.カー解は回転するブラックホールを表す解で,軸対称なのだという.確かに,ある軸の周りに回転しているのだから時空が軸対称になるだろうということは分かる.

しかし中心で回転している質量についてはどうなのか球対称であることを仮定しているのだろうか.それとも遠心力により回転楕円体に変形することをちゃんと考慮しているのだろうか.あるいは座標がおかしくなっていてそんなことを気にすること自体が無意味なのだろうか

もし中心の質量として球対称のみを仮定しているというのなら「ブラックホール唯一性定理」というのもおかしな話で,色んな楕円体を仮定した解が他にもありそうなものだ.もし形状はあまり関係ないというのなら,ワイル解や冨松佐藤解というのは一体,どんな形状だというのだろう

初心者向けの資料をざっと調べてみた限りではこの辺りの説明が曖昧なので,やはりいずれは自分で数式を追って確かめてみるしかないのかもしれない.



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