光速度の変化

これで変なコピペも減るだろう。

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目の前の光の速度は同じ値

 一般相対論においてはもはや「光速度一定」は原理ではないのだった。では光速度はどのように変化すると表現できるのか。このことについての質問が意外に多い。私も気になることが幾つかあるので確認しておこう。

 まずは平坦な時空の計量を見てもらいたい。

\[ \begin{align*} \diff s^2 \ =\ - \diff w^2 \ +\ \diff x^2 \ +\ \diff y^2 \ +\ \diff z^2 \tag{1} \end{align*} \]
 光は\( \diff s = 0 \)となるような進路を取るので、これをこの式の左辺に代入してやると、
\[ \begin{align*} &0 \ =\ - \diff w^2 \ +\ \diff x^2 \ +\ \diff y^2 \ +\ \diff z^2 \\ \therefore \ &\diff w^2 \ =\ \diff x^2 \ +\ \diff y^2 \ +\ \diff z^2 \\ \therefore \ &\diff w \ =\ \pm \sqrt{ \diff x^2 \ +\ \diff y^2 \ +\ \diff z^2 } \\ \therefore \ &c \diff t \ =\ \pm \sqrt{ \diff L^2 } \\ \therefore \ &c \diff t \ =\ \pm \diff L \\ \therefore \ &\dif{L}{t} \ =\ \pm c \end{align*} \]
となり、光の速度が\( c \)であることが導かれる。いや、本当は論理が逆であり、光速が\( c \)だからこそ光は\( \diff s = 0 \)となるようなコースを取ると言えるのかも知れない。どちらでも大きな違いはないのだが。

 念のため確認しておくが、今やったのは、この座標を使う人にとって、光が\( \diff w \)秒の間に\( \diff x \)\( \diff y \)\( \diff z \)だけ進んだと観察されたときの関係を論じたのである。

 さて、あらゆる人にとって自分のいる一点だけでは時空は平らだと信じることが出来、そうなるような座標を選ぶことができるというのが一般相対論の結果であった。つまり、自分の視点に合わせた座標を採用する限りでは自分の足元で (1) 式が成り立っているのである。

 ここから分かることは、どの人にとっても目の前を通過する光の速度は同じ値であるということである。それは重力場の中にいる人にとっても言えることで、同じ値である。しかし自分のいる場所以外での光速について語る時には、見る人によってその値が異なるのである。

 今やった計算を見れば、どんな計算をすればその値が求まるのか、だいたい予想は付くことだろう。シュバルツシルト解を例に取ってやってみよう。


重力方向の光速

 シュバルツシルト解の微小線素は次のように表されるのだった。
\[ \begin{align*} \diff s^2 \ =\ - \left( 1 - \frac{a}{r} \right) \diff w^2 \ +\ \left( \frac{1}{ 1 - \frac{a}{r} } \right) \diff r^2 \ +\ r^2 \diff \theta^2 \ +\ r^2 \sin^2 \theta \diff \phi^2 \tag{2} \end{align*} \]
 \( \diff s \)という量は座標変換しても不変である。光のコースの長さは、どの人の手元でも\( \diff s = 0 \)となるのだから、どの場所でも、どの座標に変換してもやはり常に\( \diff s = 0 \)だと言えることになる。

 さて、とりあえずここでは、天体の中心へとまっすぐ向かう線上を進んでいる光を考えよう。つまり\( \diff \theta = \diff \phi = 0 \)である。これらを (2) 式に代入してやるとどうなるか。

\[ \begin{align*} &0 \ =\ - \left( 1 - \frac{a}{r} \right) \diff w^2 \ +\ \left( \frac{1}{ 1 - \frac{a}{r} } \right) \diff r^2 \\ \therefore\ & \left( 1 - \frac{a}{r} \right) \diff w^2 \ =\ \left( \frac{1}{ 1 - \frac{a}{r} } \right) \diff r^2 \\ \therefore\ & \diff r^2 \ =\ \left( 1 - \frac{a}{r} \right)^2 c^2 \diff t^2 \\ \therefore\ & \dif{r}{t} \ =\ \pm \left( 1 - \frac{a}{r} \right) c \end{align*} \]
 つまりこれは、天体に近いほど、光速が小さくなっている事を表している。シュバルツシルト半径の位置ではその速度はなんと 0 である。また、上向きの光線だろうが下向きの光線だろうが差はなく、同じ値になっている。

 ニュートン力学の常識からすれば、重力に従って「落ちる」ほどに速度が小さくなって行くなんてのはちょっと奇妙かも知れないが、そういうことが起こっているのである。しかし以前に説明したように、光が落ちて行くほどにその振動数は高くなるので、光のエネルギーは増している。この点ではニュートン力学的なイメージに似ていると言える。


円周方向の光速

 円周方向に進む光の速度はどうなっているだろうか。上と全く同じ要領だ。\( \diff r = \diff \phi = 0 \)だとすると、
\[ \begin{align*} & 0 \ =\ - \left( 1 - \frac{a}{r} \right) \diff w^2 \ +\ r^2 \diff \theta^2 \\ \therefore \ &r^2 \diff \theta^2 \ =\ \left( 1 - \frac{a}{r} \right) \diff w^2 \\ \therefore \ &r \diff \theta \ =\ \pm \sqrt{ 1 - \frac{a}{r} } \ \ c \diff t \\ \therefore \ & \dif{l}{t} \ =\ \pm \sqrt{ 1 - \frac{a}{r} } \ \ c \end{align*} \]
となる。この場合も天体に近いほど光速が小さくなっていることを意味しているが、平方根がついている分だけ、重力方向に進む光ほど小さくなってはいない。もちろん現場にいる限りでは、重力方向に進む光とそれに対して垂直な方向に進む光とで光速の差はない。しかし傍から見れば、光の進む方向によって速度差があるように見えるというわけだ。

 これは前回、「重力方向には空間が縮んでいるが円周方向には縮みはない」と話したことと関係あるだろうか。もちろんだ。分かり易くするために具体的な値を入れて話してみよう。

 前回の話で、シュバルツシルト半径の 4/3 倍の地点では時間の流れが無限遠と比べてちょうど半分になっているという話をした。そしてその地点では重力方向の距離も半分に縮んでいることになるとの話だった。一方、円周方向には全く縮んでいない。さて、この状況での時間の遅れの効果だけで、この地点の光速度は\( c/2 \)になっていいだろう。さらに距離の縮みの効果によって重力方向の光速度だけはさらに半分の\( c/4 \)になっていると解釈できるわけだ。実に分かりやすい、辻褄の合う解釈だ。

 このことで前回のすっきりしなかった点が解決するだろうか。つまり、光速が低下することを根拠にして、距離は本当に縮んでいるのだと言い切れるだろうか。残念ながら無理である。今回、光速度を計算するために、座標\( r \)を正しい距離を表すものとして受け入れて使ってしまっている。光速が変化するということ自体、座標の読みを基準にする限りはそう解釈せざるを得ないというくらいの話に過ぎないわけだ。


座標の解釈

 前回から引きずっている疑問をここらで早目に解決しておいた方がいいだろう。一体なぜ私はシュバルツシルト解の動径座標\( r \)の目盛りを、長さの基準として受け入れることに気持ち悪さを感じているのだろう。逆に、どうなっていれば納得できるだろう。

 \( r \)が一定となるような線をたどって行っても星の周りを一周して戻ってくるだけで無限遠の地点には繋がっていない。その場で完結してしまっている。つまり、\( r \)の目盛り間隔を、他の場所と直接比較できないところが気持ち悪いのだ。もしデカルト座標のようだったならば、ある座標間隔が、無限遠ではどうなっているかを論じることもできるだろうに。

 例えば、こんなことを考えてみた。星の表面に立って、ある高さと別の高さとに 2 本の平行線を引く。この 2 本の直線の距離が\( r \)座標で測って\( d \)だとしよう。これをまっすぐ延長していけば、時空が歪んでいるから途中で曲がるだろうが、星をずっと離れた無限遠の地点へと向かうだろう。これらの直線はそこでもまだ平行だろうか。もしそうであって、その間隔がそこでも\( d \)だけ離れていたならば、受け入れてもいい気がする。

 残念ながらこの考えはあまり良くないし、本質を突いてもいない。測地線などを考えてみたが、おそらく、ずっと平行なままということもないだろう。

 動径座標\( r \)の目盛り間隔は円周を基準にして「定義」されたのである。この定義は方程式を解くことで自然に出てきたものではなく、解く過程で人間の都合でそうしたのである。ちょっと思い出してみようか。以前に解を導いた記事の中でこのような形が出てきたはずだ。

\[ \begin{align*} \diff s^2 \ =\ -B(r) \diff w^2 + C(r) \diff r^2 + A(r) \Big[ r^2 \diff \theta^2 + r^2 \sin^2 \theta \diff \phi^2 \Big] \end{align*} \]
 この後で\( A(r) \)を 1 に設定している。本当は無限遠で\( A(r) \rightarrow 1 \)となるならば他の形の関数にしても良かったはずで、動径座標の取り方には任意性があるわけだ。

 人為的な定義を採用したとは言っても、平坦な時空でならこの定義で問題が起こることはない。こういう距離の縮みとかいう問題が起きるのは、実際に時空に伸び縮みがあるからというのは確かなのだ。

 座標の取り方によって距離は幾らでも縮むし、光速は幾らでも変わる。これはちょっと気持ち悪いことだ。それを見破るために\( \diff s \)という量を計算すればいいとは言っても・・・。

 私としては、そこに座標が引かれているか否かにかかわらず、本当にそこで光速が遅くなっているかどうかが知りたいのだ。とは言うものの、座標なしに速度を測ることなんて出来はしない。それに、ある地点での光速が現実にどれくらいになっているかを知りたければ、つまり、座標に関係なく、真実、どれくらいになっているかということだが、\( \diff s \)を調べるという手段が残されているではないか。その結果は常に\( \diff s = 0 \)。現場では光速は常に\( c \)なのだ。このことで満足すべきではないだろうか。

 座標というのは本当に人為的で頼りないものであることが分かる。その目盛りを受け入れるかどうかは、それが便利かどうか、という点だけではないか。受け入れるだけの理由付けができれば受け入れればいいということだ。何だかすっきりしてきたぞ。


等方座標

 という事は・・・だ。重力方向の距離の縮みの起こらないような新座標\( R \)を導入してやることも出来るというわけか。いや、待てよ。しかしそうすると、今度は円周方向の距離を\( R \diff \theta \)で表すことになるわけだから、そっちに影響が出てしまうことになるのか。それは美しくないなぁ。わざわざ試してみる価値も半減だ。

 あれ?ひょっとして・・・、上手く影響を分け合うことで、どちらの方向にも距離の縮みが同じになるような座標なんて作れるのだろうか。

 ここまでは良かったのだが、これについて考え始めた瞬間に、本当に偶然にジャストタイミングで、ネットで「等方座標」というものの存在を目にしてしまい、このアイデアが私のオリジナルでないことを知ってしまった。しかも「シュバルツシルト解をデカルト座標で表現できる」という、私が思った以上に面白い話になるというのである。

 もう少し正直に言うと、この計算がうまく行かずに悩んでいたときに、 たまたま「デカルト座標で表現されたシュバルツシルト解」を目にしたのがきっかけで 等方座標にたどり着いたのである。  計算がうまく行かなかったのは微分の変換を計算した後で比較しようとしたからで、 非線形微分方程式を解かなくてはならなくなってしまった。  これからやるように、比較してから積分すれば良かったのだが、それでもちょっと面倒ではある。
 どの方向にも同じ空間の縮みが起こるという事は、シュバルツシルト解が新座標を使って次のような形式で表せればいいということである。
\[ \begin{align*} \diff s^2 \ =\ - \left( 1 - \frac{a}{r} \right) \diff w^2 \ +\ K(R) \Big[ \diff R^2 \ +\ R^2 \diff \theta^2 \ +\ R^2 \sin^2 \theta \diff \phi^2 \Big] \tag{3} \end{align*} \]
 この式と、元のシュバルツシルト解である (2) 式を比較すれば、
\[ \begin{align*} \left \{ \begin{array}{l} K(R) \diff R^2 \ =\ \left( {\displaystyle \frac{1}{ 1 - \frac{a}{r} } } \right) \diff r^2 \\[8pt] K(R) R^2 \ =\ r^2 \end{array} \right. \end{align*} \]
という関係が成り立っているべきだということが分かる。そこで、とりあえずここから\( K(R) \)を消去することで\( r \)\( R \)の関係を導いてみよう。
\[ \begin{align*} &\frac{r^2}{R^2} \diff R^2 \ =\ \left( \frac{1}{ 1 - \frac{a}{r} } \right) \diff r^2 \\ \therefore\ & \frac{\diff R}{R} \ =\ \pm \frac{\diff r}{\sqrt{r^2-ra}} \end{align*} \]
 この両辺を積分してみよう。自力での計算は早々に諦めて、再びコンピュータ(Wolfram Alpha) に頼るとしよう。結果はごちゃごちゃとしているが\( r \)\( r-a \)も正の値なので符号も取っ払って、こんな感じでいいのだろう。
\[ \begin{align*} &\log_e R \ =\ 2 \log_e \left( \sqrt{r-a}+\sqrt{r} \right) \ +\ C \\ \therefore\ &R \ =\ \left( 2r - a + 2\sqrt{r(r-a)} \right)\, e^C \end{align*} \]
 これを\( r \)について解いてやると、
\[ \begin{align*} r \ =\ \frac{R}{4e^C} + \frac{a^2 e^C}{4R} + \frac{a}{2} \end{align*} \]
となる。定数\( e^C \)が邪魔だが、このまま続けよう。これで\( K(R) \)を求めることが出来る。
\[ \begin{align*} K(R) \ &=\ \frac{r^2}{R^2} \ =\ \left(\frac{r}{R}\right)^2 \\ &=\ \left( \frac{1}{4e^C} + \frac{a^2 e^C}{4R^2} + \frac{a}{2R} \right)^2 \end{align*} \]
 \( K(R) \)というのは\( R \rightarrow \infty \)で 1 になっていてほしいので、そのためには\( e^C = 1/4 \)であればいいことになる。よって、
\[ \begin{align*} K(R) \ &=\ \left( 1 + \frac{a^2}{16R^2} + \frac{a}{2R} \right)^2 \\ &=\ \left( 1 + \frac{a}{4R} \right)^4 \\ \end{align*} \]
となる。すっきりまとまってとても嬉しい。一方、\( r \)\( R \)の関係もすっきりして、
\[ \begin{align*} r \ &=\ R + \frac{a^2}{16R} + \frac{a}{2} \\ &=\ R \left( 1 + \frac{a^2}{16R^2} + \frac{a}{2R} \right) \\ &=\ R \left( 1 + \frac{a}{4R} \right)^2 \tag{4} \end{align*} \]
となる。これらを (3) 式に代入すれば、計算過程は省くが、探していた表現が次のように求まるというわけだ。
\[ \begin{align*} \diff s^2 \ =\ - \frac{\left( 1 - \frac{a}{4R} \right)^2}{\left( 1 + \frac{a}{4R} \right)^2} \diff w^2 \ +\ \left( 1 + \frac{a}{4R} \right)^4 \Big[ \diff R^2 \ +\ R^2 \diff \theta^2 \ +\ R^2 \sin^2 \theta \diff \phi^2 \Big] \end{align*} \]
 この式は、通常の極座標とデカルト座標の変換のルールを当てはめることによって、
\[ \begin{align*} \diff s^2 \ =\ - \frac{\left( 1 - \frac{a}{4R} \right)^2}{\left( 1 + \frac{a}{4R} \right)^2} \diff w^2 \ +\ \left( 1 + \frac{a}{4R} \right)^4 \big( \diff x^2 + \diff y^2 + \diff z^2 \big) \tag{5} \end{align*} \]
のように書き直すことも出来る。そうなのだ。どの方向にも均等に縮むというのでシュバルツシルト解をデカルト座標で表すことも出来てしまうのである。

 これはちょっと驚きの結果であった。少し前までは極座標の目盛りを受け入れられずに、代わりにデカルト座標のようなものが使えたらもっと受け入れ易いのに、などと考え込んでいたのだった。しかしここまでの理屈をちゃんと知ってしまえば、座標として何を使うかは特に問題ではないわけで、そのうち当たり前にも思えてきてしまう。


特異点が消えた?

 ところで今導いた等方座標ではシュバルツシルト半径はどうなってしまっただろうか。元のシュバルツシルト解である (2) 式では第 2 項に\( r = a \)が入ると分母が 0 になって、数学的にまずいのだった。しかし等方座標で表現された (5) 式を見ると、\( R = 0 \)以外の特異点は消えてしまっている。だからといってシュバルツシルト半径という奇妙な点がなくなってしまったわけではない。(5) 式の第 1 項は\( R = a/4 \)のところで 0 となる。外から観察すればこの地点での時間の経過が 0 に見えるわけで、不思議な現象は第 1 項だけが引き受けてくれているのである。

 \( R = a/4 \)というのを見ると、シュバルツシルト半径が 1/4 になってしまったように勘違いするかも知れないが、\( R = a/4 \)を (4) 式に代入すると分かるように、これは\( r \)で表した場合の\( r = a \)と同じ場所のことであり、物理的には当然何も変わってはいないのである。

 (2) 式の場合に\( r = a \)の点が特異点となっているのは単に座標の選択によるものであって、別に特異点だからそこで奇妙なことが起こるというわけではないようだ。

 等方座標のイメージについて、もう少しだけ書いておこう。シュバルツシルト解の空間部分の 2 次元のみを取り出してグラフに表した場合、原点付近が漏斗のように沈み込むような曲面になっている。等方座標の座標軸というのは、そこに無理やりデカルト座標のように縦横に線を引いた形になっている。原点から十分離れたところではそれはデカルト座標そのものだからだ。

 では原点に近いところ、沈み込む曲面上ではこの線はどうなっているだろうか。曲がっているのである。デカルト座標というとまっすぐ引かれた線のイメージがあるが、曲がった時空ではそうではないのである。それは測地線でもない。

 ではこの曲面を真上から見下ろせば、通常のデカルト座標に見えるようになっているのだろうか。そういうわけでもない。中心付近をわずかに避けるかのような、少し膨み気味の線になっていることだろう。なぜなら、\( x = a/4 \)の座標線は十分遠方では通常のデカルト座標と同じだから、もしまっすぐ進めばシュバルツシルト半径よりも内側を貫くだろう。しかし中心付近では\( ( a/4, 0 ) \)という点を通るはずで、それはシュバルツシルト半径のほとりである。

 暇があったら美しい参考画像でも用意してみたいが、今の私の力量ではまだ無理である。どんなツールでどう設定すればそれが描けるものなのか、良く分からないでいる。


コピペに注意

 最後に、私を悩ませたものについて愚痴を言っておこう。あちこちの質問サイトや掲示板などで、「光速は常に一定である」との知ったかぶりの説明をして、質問者を間違った方向へ導こうとする初心者がいる。それを正すために別の人が現れて「一般相対論においては光速は実は変化するのだ」と説明することになるのだが、そこまではいい。

 しかしどう変化するのか数式を示せとなると、どれも同じ具合に、次のように書いているのだ。

 『ある観測者が自分とは別な点の光速度を測定すると\( c = c_0 (1 + \phi/c^2) \)の形になる。ここで\( \phi \)は原点から見た測定する点の重力ポテンシャル。』

 どこから引っ張ってきた知識か知らないが、わざわざ重力ポテンシャルを使って表す利点があるのだろうか?重力ポテンシャルを使えばこの式は一般的に成り立つとでも言うのだろうか?そう思って調べてみたが、これは「一様加速によって感じる擬似重力」の場合には正しいようだが、一般には正しくない。時間の遅れの効果だけを考慮して計算されているためだ。それにこの書き方だと、方向によって光速が異なるということも説明できない。一体どちらが正しいのかと心配になってかなりの時間を費やしてしまった。

 さて、この記事を仕上げる頃になって、やっとその原典を見つけた。アインシュタイン自身が一般相対論を完成させる前に書いた論文 (1911年) だ。

Über den Einfluß der Schwerkraft auf die Ausbreitung des Lichtes. 「光の伝播への重力の影響について」 Annalen der Physik. 35, 1911, Seite 898-908
 この頃のアインシュタインはまだ距離の縮みを考慮しておらず、太陽によって光の進路が曲げられる角度の予想も、正しい値の半分だとしている。

 私を悩ませたのは、後になってアインシュタイン自身によって誤りを修正されることになる論文からのコピペだったというわけだ。

 この記事の公開当時、この論文の日本語訳をこちらのサイトにて誰にでも読める形で公開して下さっていました。  あちこちの掲示板で良く見られた書き込みはそこからコピペされたものだと思われます。