物理を解説 ♪
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電圧とは何か

気にすると、なかなか難しいのだ。
作成:2015/6/9

単純にはこれだけでいい

「電圧」という用語は良く使うし,耳慣れていると思うが,この意味を説明するときには少々困る.同じ「電圧」という言葉で表されるものであっても,実際に起きていることは場面によって少々違うのである.

しかし簡単に言えば,「電圧とは電流を流そうとする圧力のようなもの」という理解で十分である.


物理学的な説明

それにしても,なぜ電子回路には電流と電圧という似たような概念が二つも要るのだろうかどちらも「電気の勢い」を表しているだけではないか

その辺りをはっきりさせるため,物理学的に説明をしてみよう.

電磁気学の中で,電場が掛かっている空間中で電荷を移動させるのに必要なエネルギーを表すために静電ポテンシャルφというものを導入したのだった.このφのことを別名,「電位」とも呼ぶ.

地面を転がるボールに喩えるならば,電位というのは地面の高さに喩えることができ,電場は地面の傾きに喩えることができるのだった.

高さというのは必ずどこかを基準にして語られるものである.ある高原の別荘の屋根を修理する場面を想像してみよう.梯子を持ってきて,壁に立てかけてみるのだが,高さが足りない.そこで「この屋根の高さは」と聞かれたら,どこを基準に答えるべきだろうかまさか,わざわざ標高を使って「1325メートルです」なんて言わないはずだ.今知りたいのはその場所の地面を基準にした高さなのだ.

電位にしても同じことで,大抵の場合に知りたいのは,2 点間の電位の差,つまり「電位差」なのだ.

電位差というのは,空間の 2 点間,あるいは電子回路の 2 点間のエネルギーの落差を意味する言葉である.これは,電子にとっての位置エネルギーの差を意味するのであり,電位が高い箇所の空間に多くのエネルギーが蓄えられているというわけではないので注意して欲しい.

この落差から実際にエネルギーを取り出したければ,この落差を電荷が移動する必要がある.下向きに転がるボールのように,電荷は運動エネルギーを得ることだろう.

電位差のある場所に置かれた電荷には,そこを転がり落ちようとする力が働くのである.

すると,電圧というのは,物理学的には電位差と同じものだと言って良いだろうか.そう,だいたいは同じだと言ってもいい.しかし電圧は電位差以外のものも含むのである.


電子回路の中のエネルギーの落差

電子回路の中で,電子にとってのエネルギーの落差を生じさせるものは色々とある.

普通は電荷が存在していれば,それだけでその周囲には電場が自然に生じている.多数の電荷が集まれば,そこには強い電場があり,反発力に逆らって近寄るのにエネルギーが要るし,吸引力を受けていればそこに近付くときに加速され,それによって電位差に相当する運動エネルギーを得る.

電子回路中ではこの現象は起きるだろうか.回路中には多数の電子があるのだが,導線金属の原子核のプラスの電荷と数が釣り合っているので,ほとんどの場合,電荷の合計は全体で打ち消し合っていて,このようなことは起きない.起きるとすればコンデンサの内部のような,一部に電子が過剰に集まったり,少なくなったりする場所である.

あるいは電池がその原因になることもある.電池の両極を導線で『繋がない』でいると,マイナス極では電子が過剰になり,プラス極には電子が少ない状態が作られて,プラスの電荷が過剰になる.これらの電荷が作る電場によって,両極の間には電位差が生じている.電池はこの電位差を越えてまで化学反応を起こすエネルギーを持っていないので,電子の供給はこの状態ですぐに止まる.

もしこの両極を導線で繋いでやれば,溜め込んだ電荷は導線を勢い良く流れ,電荷の偏りは一気に解消し,電位差は消え失せるだろう.電池は再び化学反応を起こして電子をマイナス極へと汲み上げようとするが,どれだけ頑張ってもすぐに電子は流れていってしまうので,化学反応はとどまることなく勢い良く進む.電池のメーカーが想定しないような量の反応が持続するので危ない状況だ.ショート」または「短絡」と呼ばれる危険な行為であり,電池が異常に発熱したり,爆発したり,内部の構造が腐食して液が漏れることもある.これはやめた方がいい.

電池の両極の間には,もっと電気を流しにくいものを挟んでやって,電池の化学反応が追いつくような速さで電気を適度に流す必要がある.そうすれば,電池は「両極の間に適度な電位差を保ち続けられるほど」の電子を供給し続けてくれる.


電位差とは呼びにくいエネルギーの落差

ところが,回路中の電場はこれ以外の現象でも生じる.例えば磁場が変化する時,それに合わせて電場が生まれる.導線をくるくると何回も巻いてコイルを作り,そこに磁石を近づけたり遠ざけたりして磁場を変化させると,導線の中の電子がこの電場によって加速されて,導線の中を流れ始める.それで,導線の中に,電子を動かすエネルギーの落差が生じているという考え方ができる.1 回まわるごとにそのエネルギーを得るのだが,何重にも巻いてあるので,巻いた数に比例するエネルギーの落差が生まれていることになる.コイルの周囲で磁石を動かすことにより,コイルの両端に大きなエネルギーの落差が生じるのである.この現象を「電磁誘導」と呼ぶ.

また,化学反応によっても電子に高いエネルギーを与えることができる.電池というのはまさにそれを応用したものであり,エネルギーの差のあるところに,それに逆らって電子を押し上げる働きをしている.電池といえば,太陽電池も似たようなもので,こちらは光のエネルギーを電子に与えることで,エネルギーの差のあるところに電子を押し上げているのである.

これらのように,回路中にあって電子をよりエネルギーの高い状態へと押し上げようとする働きを指して「起電力」と呼ぶ.電磁誘導や電池は起電力である.起電力の強さも,結局は,エネルギーの落差の大きさで測られるものである.

だから,特に必要がなければ,これらの用語を厳密に使い分けることもない.これらの総称のように「電圧」という言葉が使われている.曖昧で,便利な言葉だ.

もともと電位や電位差という言葉は物理学用語であり,電荷の周りにある静電場に対して使うものであって,電磁誘導にまで適用するようなものではない.また,電池も,静電場に対して逆らいながらエネルギーの高い状態へ電子をたどり着かせるのではなく,化学変化や光による余剰のエネルギーを受け渡す形で,突如として高エネルギーの状態に移行させるのである.電池の両端には結果として電位差が生じるが,化学変化のエネルギーや,光エネルギーを電位差とは呼ばない.

このようにこれらは現象としてはそれぞれ異なる面を持っているが,電子回路の中ではそれぞれの場所における電気的なエネルギーの高さとして統一的に理解できるため,なんとなく「電圧」という言葉で表すのである.


もう一度、簡単にまとめ


1ボルトとは何か

「電位差」も「起電力」も「電圧」も電気的なエネルギーの落差を表しており,それらはどれも「ボルト」という単位で測られる.1 V と書いて 1 ボルトと読む.

1 ボルトとは何だろうか1 クーロンの電荷が 1 V の電位差がある 2 点間を駆け下る時,1 ジュールのエネルギーを得る.あるいはこの落差をさかのぼろうとする時,1 ジュールのエネルギーが必要になる.電荷を持つ電子にとっては,この電位差というのはエネルギーそのものを意味している.

では 1 クーロンとは何かと言えば,これは 1 アンペアの電流が 1 秒間に運ぶ電荷量である.

1 ジュールのエネルギーが 1 秒間に移動すればそれは 1 W(ワット)なので,ちょうど 1 V の電位差があるところを 1 A の電流が流れば 1 W だということになる.これは偶然ではなく,そうなるように 1 V が定義されているのである.

電流が発見された頃,初期に作られた電池の電圧が 1 V くらいであり,それが 1 V の由来だと聞いたことがあるかも知れない.しかし,今説明したように,電流の 1 A がどれくらいかを定義することで 1 V がどれくらいかが決まってしまうのである.おそらく,電流の 1 A を定義するときに,1 V がボルタ電池と同じくらいになるように取り計らったのだろう.電流の定義に少々人為的な桁合わせに思える数値が含まれているのはそのためだ.

ちなみに,電流の 1 A の定義は,1 m 離して平行に並べた二本の無限の長さの線に電流を流したときに働く力が,1 m あたり,2×10^{-7}N(ニュートン)であるときの電流だと定義されており,2×10^{-7}という数値に特に科学的な必然性がないのである.


電圧の記号

電圧を表す単位は V(ボルト)だが,それとは別に,電圧を表す記号としては E や V がよく使われる.E の由来は起電力 electromotive force の頭文字であり,V の由来は電圧 Voltage の頭文字であろう.特に使い分けがなされているわけではないが,わざわざ使い分ける人もいる.

昔は E を使っている本の方が多かった気がするのだが,近頃では V を使う文献が増えてきたようだ.私は単に昔からの慣れで E を使う書き方の方が好きである.電圧の単位の V とは違う記号を使った方がかっこいい気がする.電流 I(A) や抵抗 R(Ω) やコンデンサ C(F) やコイル L(H) などはみんな,単位の記号とその値を表す記号が別になっているのだから.

しかし書き進むうちに,エネルギーや電場の E と区別が付かなくて気持ち悪くなってきたので,今後は V で統一して書くことにしよう.



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