物理学者のエヴァンゲリオン

空想科学読本みたいな知ったかぶりをするつもりはないんだ。


 ああ、ガイナックスはダメだな。
 岡田斗司夫さんが抜けてから、科学考証がメチャクチャだ。

 ディラックの海をあんな薄っぺらに表現しちゃだめだよ。
 映像はいいんだよ、あれで。  説明がなっとらん。
 もっと、なるほどと唸らせる説明をしなきゃ。  あの説明は物理とは関係ない。

 シンジが使徒の体を構成する物質について尋ねたシーンがある。  そこで赤木リツコ博士が「粒子と波の両方の性質を持っているの」 という安易な解説をしている。
 普通の物質だってそうじゃん。 何も不思議じゃない。  ああ、物理を知らない視聴者は騙せても、私の心は騙せない。  あれじゃ、ダメなんだよ。
 あのすぐ後のカットで、リツコ博士が舌をべっと出して、 「子供をごまかすのは簡単だわ」 という台詞を一つ入れてくれるだけであのシーンはぐっと良くなるのになぁ。

 ヤシマ作戦。あれは良かった。
 全国から電気をかき集めてくる。  わしとしては、導電線の抵抗による損失の方がかなり気になったが・・・。
 荷電粒子砲には感動した。  そうだよ! 荷電粒子砲はああなるんだよ!!!  お互いの磁場でああなるんだよ!

 エントリープラグの中で、LCLが注入されるシーン。
 もっと苦しがる必要がある。  「気持ちわる・・・」で済まないんだよ。  水中で気泡を口から吐き出しながら重く咳き込んだ後、 やっとのことで安定を取り戻すくらいでなきゃ。
 LCL排出後も、一瞬、ぐっと込み上げた後で、 口からバーっと汚く吐き出さなきゃだめ。  それについては映画「アビス」あたりでちゃんと表現されている。
 それとね。 実際、水の中ではあんなに軽い調子で話せないから。  肺には重い水が入ってるんだよ。  それに声帯の振動の関係で声もかなり低くなるはずだ。  一度、人間の声ともつかない低い声が聞こえた後で、 制御室側で音声を通常に聞こえるように調整するシーンを・・・・、 ああ、1カットでいいから挿入してくれれば、もっと感情移入できたのに。

 ああ、興ざめだー。  いい線まで行ってるから、なお悔しい。

 実は私、エヴァンゲリオン嫌いなんです。  感情移入できないから。  あの世界の中に私の居場所が作れないのです。  ただ客観的に見てるだけ・・・。  謎が多いけれど、徐々に明かされることも無く、視聴者置き去りでただ進んでいく。  判断も何も出来ない。  もし自分だったら・・・、と考えるだけの情報も与えられない。  登場人物はみんな自分勝手で子供ばかり。  他人を愛するほど成熟したキャラもいないしね。


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