戦闘の記憶

俺はひょっとしてすごかったのか


 1989年12月12日。

俺が夢の中で戦っている。

 左腕から気弾を放つ。
 敵の姿がはっきりしない。
 しかし壮絶な戦いのようだ。

 通常、あれだけの気を練れば意識が持たないはずだ。
 村上さんも6発が限度だと話していた。
 俺にあんな強烈な気弾が撃てるなんて。

 気合を込めた掛け声に従うように気弾が進路を曲げる!
 すごい。気の弾道を操っている!

 夢はそこでぷっつりと途絶えた。

 左腹に衝撃が残っている。
 俺は・・やられたのか・・。
 呼吸がまだ早い。
 今の妙に鮮烈な夢は一体・・・。

 それにしても、耳に残るあの言葉。
 気を操るための呪文、あるいは命令のようなものなのか。

 それにしても・・・とても口には出来ない。
 一つは、何が起こるか分からない恐怖。
 一つは、神聖なものかも知れないという畏れ。
 そしてもう一つは、・・・恥ずかしさだ。
 何であんな言葉なんだ・・・?

 「マホトンバ」「タワラチン」

 夢の中ではかっこよかったのだが、だめだ。 現世では使えない。
 皆には黙っておくことにしよう。

 しかし、いざとなったら使うことになるのかも知れない。
 まぁ真剣にやって、それなりの活躍が出来たらカッコいいかな?

:ここは俺に任せろ!
効果音:ブンッ!(構える音)
:マホトン・・バァッ!
後輩(女子):すごい・・・!
:チッ!そう来たか
後輩(女子):広江先輩っ!危ないッ
:下がれ!派手に行くぞ
:タワラチンッ!

 うーん、肝心なところで今ひとつだ。

 神聖なものを恥ずかしいなどと思うことは 侮辱にあたる可能性があるので、
この思いはずっと心の奥に秘めておくのだ。


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