体育館へ向かう途中、俺と笹岡はこれからの試合について語り合った。
二人ともこの勝負を楽しみにしていた。
「ところで、何番目に出てくる?」 この能力もこういうときには役に立つなぁと感心する。 そして、このような能力を身近に使っている仲間に入っていることに優越感を感じるのだ。
「なぁ、本当に読めるのか?」 確かにやつは俺しか知らないはずの日記の内容を何も見ずに読み上げたし、 俺がマリーに出した手紙の書き出しも読み上げたし、 俺が明石さんを好きだということも言い当てた。 ある意味、俺より俺を知っているのだ。 しかし、それでも心のどこかで疑ってはいた。 それくらいのことは何かのトリックで出来るのではないだろうか。 俺の行動パターンが単純で分かりやすい、ということもあるだろう。 考えたくないことだが、彼女が彼に私の手紙の内容を話した可能性だって否定は出来ない。
「簡単だよ。」
「じゃあさ、笹岡が目をつぶって、俺が手で攻撃するから手のひらでよけてみて。」 (いいぞ。 俺の思うように事が進んでる。 今日はラッキーだ。) 体育館へ続く出口の直前に保健室があるが、その前でその実験はいきなり始まった。 クラスメートが不思議そうにみながら通り過ぎてゆく。 みんなこの実験の意味するところを知らない。
しかし、その実験はうまく行かなかった。
分かったからもういいよ、
と言おうと思ったが、彼は、変だなというような顔をして
いつまでも熱心に続けている。
何か俺の知らない、コツか何かが要るのだろうか? (俺の視点で見てやがる!) つまり、心を読むとはそういうことだったのだ。 俺を端末として、俺の見た映像をそのまま見ているのだ。 私がこのことに気付いた瞬間、彼の口元がかすかに笑った。
確かに考えてみれば当然のことかも知れない。
しかし俺は心を読むということについてもっと違う概念があった。
つまり、頭の中にある「言葉」というか「考え」そのもの、
つまり、何と言おうか、空間や配置に縛られない全体像をつかめるのだと漠然と思っていた。
アニメなどでは、心を読むような能力を持つ敵は冷静に描かれており、
大抵の場合、主人公は大ピンチに陥るではないか。 その現実感の故になおさら、確かに俺の心は読まれているのだという屈辱を 心の底から認めざるを得なかったのだ。 私の気持ちを考えた上で、その先を予測できる、というようなものとは全く異なる方法! 経験的に予想がつくというようなものではなく、俺を理解しているというものでもなく。 すなわち、・・・やつは俺の心を読むが、俺の気持ちなんて読んではいないのだ!! この屈辱、この言葉の意味が理解できるか!?
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