試合開始俺とやつのグループが向かい合った時、 やつは俺と対戦しないことが分かった。「なぜ対戦に応じなかったのだろう?」 俺は気になって体育の時間中、彼の方ばかり見ていたが、 なぜか彼はいつものように私にニヤリと笑い返すこともせず、少し沈んだ真面目な顔でいた。 俺も体育の時間中は彼に声をかけなかった。 普通、彼のような性格と私のような性格が 親しくしていることは他人から見て信じられないことであり、 私は彼の「本来の」友人たちに遠慮して部活以外では彼と親しく語るのを遠慮していたのだ。 授業が終わった後、俺は彼の考えを確かめに行った。 「どうした? 手違いか?」 すると彼はあまり語りたくないかのように沈んだ声でこう言った。 「あとで話す」
天の怒り一体、彼に何が起こったのか? 気になって仕方なかった。 そして、部活の時に彼はやっと口を開いた。「天使さまが現れて、そんな馬鹿なことのためにその力を使うんじゃないと、強くしかられた。」 彼のような大柄な男が「天使さま」という表現を使う辺りに妙に違和感があったが、 それがなおさら真実味を持たせている。 そのことのために彼はその日、落ち込んでいた。 私は内心喜んだ。 彼の間違った力の使い方のせいで私が苦しめられていることが天に知られている! これで彼の横暴も収まるだろう。 (今回のことについては俺は全く反省なし) 私は彼が天使さまと呼んでいるものの正体が知りたくなった。 それで、「天使に羽根はあったか」と尋ねてみた。 すると彼は「天使に羽根なんかない。 当たり前じゃないか。」とすぐさまきっぱり答えた。 それからしばらく、彼はことあるごとに「天使には羽があるんだってー」と笑いながら俺のことをからかった。 (そうか? 普通の人は天使と聞けば羽根の生えた人を思い浮かべるのではないだろうか?) しかし彼の返事で私は確信を持った。 (やはり。 それは俺が知っている通りの天使の姿であって、普通の人はそれを知るまい。 彼の言っていることは正しい。 確かにやつは天使を見たのだ。)
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