疾風怒濤の時代は過ぎた。 もういつのことだったか、私も忘れてしまった。 どういう経緯だったかも忘れてしまった。 とにかく、私はある建物の中で、もういちど村上さんに出会った。 大学を卒業した後だったか、前だったか、やはり思い出せない。
当時の関わりのあったほとんどの人たちとは疎遠になり、
ある人は失踪したままだった。
夕暮れで、少し肌寒かった。
暗い階段を登ったところの、東向きの窓からの薄明かりの差す廊下で、 当時の思い出が蘇って、少し嬉しくなったのは確かだ。 「何か新しい話はありますか?」
近況を述べ合った後、私は当時のように問いかけた。 しかし彼は当時のような熱意のこもった目で、静かに話し始めた。 「すごいことです。 日本は滅びます。 世界の中で真っ先に。」
またまた、そんな、ありえない話を・・・。 「いや、そんなことはないでしょう。 一体何が起こるというんです?」 「それについては話せません。 でも確実にそうなります。」
ほら、来たよ。 どこまで本当だか分かったもんじゃない。
「まず日本からです。
日本にだけ起こる大破滅を色々と想像しようとしたが、無理だった。 「他には、この先、何か起きますか?」 「私は裏切られます。 悪人だと看做されるようになるでしょう。」
被害妄想なのかな? 「ふーむ。 何かしようっていうんですか?」
私は何のことを話しているのだかさっぱり想像がつかないといった態度を取った。
私は失望しながら家に帰った。 こんな男の荒唐無稽な話を信じて振り回されていたんだ。
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