三人の名前

俺は・・・何をしたらいいのですか・・・


 1989年12月6日。

 下校。
 長い道のりを歩いて駅に着いた。
 日が沈んだ後の暗い夕焼け空。
 少し肌寒い季節になってきた。

 出発待ちの列車に席を見つけると、 しばらく窓の外を見ながら考え事をし、 やがて何かを期待しながら目を閉じる。  列車の座席のヒーターのぬくもりが心地よい。

 精神世界の深いところへと降りて行くような感覚。

 何か、誰かに呼ばれているような気がする。

 「ラメク、ラナイ、スルスラ ・・・・

 来た! メッセージだ。
 覚えなきゃ、持って帰らなきゃ。 何て言ったっけ。

 俺は精神世界から急速に上昇していくのを感じていた。
 ああ、途切れる・・・。

 「この3人の名前をしっかりと・・・

 だめだ、止められない。
 明るくなってきた。 表層はすぐそこだ。 もう浮かび上がる!

 俺は目を覚ましてしまった。
 鼓動が早かった。

 確かに聞こえた・・・。
 「ラメク、ラナイ、スルスラ・・・」
 良し、ちゃんと覚えている。

 俺はいつもこうして失敗する。
 意味を考えようとする余り、心をかき乱して、 精神世界のリンクがすぐに切れてしまうのだ。

 しかし言葉になる以前に発せられる「意味の波」だけは 最後に辛うじて掴めた。
「この3人の名前をしっかりと覚えておきなさい。」

 どういうことなんだろう。

 そもそもこれが単なる夢で、 どこかで見聞きした単語のフラッシュバックでないと どうして言い切れるだろう。

 「ラメク、ラナイ・・・」 この二つはどこかで聞いたような単語だ。
 ラメクは聖書に出ていただろうか。
 ラナイなんてどこで聞いたかも思い出せないが、 意外なところで身近にありそうな気もする。

 それにしても、ぷっ、スルスラだって。
 こんな変なのは絶対に聞いた事がない。
 俺の想像力を超えている。

 あ、でも人の名前だって言ってたな。
 これが名前だって? 変な名前・・・。 あ、失礼か。
 多分、偉大な方の名前だ。 大切に扱わねば。

 それにしても上の世界には不思議な名前があるものだなぁ。

 で、この名前が何だというのだ。
 俺に何をしろと・・・。
 続きが聞けなかったのが悔やまれる。
 霊界からの久々のリンクに舞い上がってしまったせいだ。

 私はその3つの言葉をノートに大切にメモした。
 電車の出発時刻が来た。

 しばらく考えを巡らせた後でもう一度目を閉じてみるが、 今度は何の気配もない。
 やっぱりそう簡単には繋がらないな・・・。
 今度はそのままウトウトと眠りに落ち込んでしまっただけだった。  そしてまるで意味の無い支離滅裂な夢を見た。

 笹岡には黙っていよう。 また失望されるだけだ。


 注: スルスラについて。  その名前が実在すると知ったのはつい最近(2005年)のことだ。  「魔女の宅急便」の再放送を見ていて、 あの絵描きの女の子の名前が「ウルスラ」だと気付いて驚いた。  慌ててインターネットで検索してみたらウルスラという人名がかなり見つかり、綴りが分かった。  Ursula・・・ということは、スルスラは Sursula とでも書けばいいのだろうか?  その綴りで検索をかけたら、見付かった。  「あるんだ・・・」  Ursula が アーシュラと表記されることが多いことからして、 Sursula は「サーシュラ」と読んだりもするのだろうか。

 注: ラナイについては、 ハワイ島の近くにラナイ島というのが存在する。  結構有名な島だが、当時は全く知らなかった。  まぁ、どこかで耳にしていたとしても不思議ではない。

 注: ラメクは確かに聖書に出てきていた。  しかし全く不思議な事だが、 この名前が聖書のどこに出てくるのかについては 当時なぜか全く関心がなかった。


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