17.どうして実験結果が出るのに何年もかかるんですか。
今回の実験は、一回だけ衝突させてそれで終わりってわけじゃない。
何百万回、何千万回、それ以上の衝突を繰り返して、
コンピュータの助けを借りて、何か珍しい事が起きていないかを調べるわけだ。
素粒子の反応というのは確率で起きる。
だから今回の実験で起こる反応のほとんどは、
今までの低エネルギーの衝突実験でも良く起きている、
珍しくも何ともない、つまらない反応ばかりだろう。
データを蓄積して、解析して、珍しい、今まで見た事もない反応がないかを探して、
統計を取る必要があるわけだ。
中には、数ヶ月の観測だけで、「見込みなし」と判断できるものもあるし、
本当に大量のデータを調べてみないと結論が出せないものもある。
もしブラックホールができるにしても、
そういう大量のつまらないデータの中から、苦労して証拠を探し出さないといけない。
さて、せっかく私がこのような、ちょっとふざけたような文章を(少しは苦労して)作って公開したのだが、
どうやらそのほんの数日後に、
日本の真面目な加速器研究機関である KEK が、
本家 CERN が公表している「LHC の安全性について」の日本語訳を完成させて公開して下さったようである。
もちろんそちらを読んで下さった方が、より正確な情報に触れられるだろう。