スターウォーズから失われたもの

そして現実からも失われたもの


ああ、ヨーダ様!
あなたはそんなバカみたいに飛び回ってはいけない。
気功を打ち出してはいけない。
CGのお陰で強くなった、なんて言わせてはいけない。
あなたが前3部作で語ったフォースは
そんな目に見える薄っぺらなものだったのですか!

 無駄のない最小限の動きでよけて欲しかった。
 居合で相手のサーベルを落として欲しかった。
 強さは武器や小手先の技ではないことを教えて欲しかった。


スターウォーズから失われたもの〜ヒロイズム

 彼がいてくれれば、という不安。
 彼が来てくれれば、という期待。
 僕じゃなきゃ駄目なんだという自信。
 沢山の人々が活躍する中で、それでもひときわ輝くもの。
 人ごみで自分を見失わないでいられる力。

 若い希望を守るために戦う師。
 ハン・ソロへの期待と失望。
 太陽の中から突如現れるミレニアムファルコン!
 吹雪の中をルークを探しに出るソロ。
 ソロを助けに行くランドー。
 皆が期待するジェダイ・ルーク。

 皆輝いていた。
 自分の価値を知っていた。 皆何かを背負っていた。

 最近の作品では皆、立場上の義務感と衝動で流されて動いているだけだ。


スターウォーズから失われたもの〜厳格さ・禁欲的精神

 かつては多くおり、共和国の平和を守ったというジェダイの騎士。
 ああ、どれだけ憧れたことか。
 俗世とはかけ離れた高邁な精神と国家への忠誠心。
 厳格な規律を重んじ、目的を一つにして暗躍する謎の集団。

 そんな姿を想像していたのに、あの薄っぺらな団体は何だ?

 綺麗なオペレーションルームでたむろっていてはいけない。
 対等に口を利いてはいけない。
 仲間といえども少しでも気を許せば斬るか斬られるか、 そんな緊迫した空気があってもいいんじゃないか。
 彼らの存在は、中世騎士物語のウィザードのようであるべきだろう?

 ハリーポッターに出てくる先生方の方がよっぽど緊迫感あるよ。


スターウォーズから失われたもの〜いつもすぐ隣りにある危険

 砂漠に取り残されたドロイドたちの不安。
 ルークを助けたソロのサバイバル術。
 どこまでも抜ける事のない深い森。

   砂漠に残されること。
 吹雪の中に取り残されること。
 仲間と離れ離れになること。
 それは死と隣り合わせを意味していた・・・はずだ。

 それがどうだ?
 ビル街で飛び降りようが、危険を感じない。
 どこに取り残されても孤独を感じない。
 絶対に助けはすぐに来ることになっているのだ。


スターウォーズから失われたもの〜宇宙の広さと孤独感

 拠点を変えながら抵抗を続ける反乱軍。
 絶望的に広い宇宙の中でのこの頼りのなさ。

 反乱軍の本体を離れ、一人ダゴバへ単独行動をする決意。
 仲間の危機にもすぐに駆けつけられない精神的距離。

 宇宙をワープで旅する間の時間の流れが宇宙の広さを感じさせていた。

 それが最近の作品ではどうだ?
 時差がほとんど感じられない星間通信。
 飛べばすぐについてしまう目的地。
 レース場はいくら広くたってレース場の中に過ぎず。
 街はどれだけ大きくても街の中に過ぎず。

 ああ、デススター内部は広かったし、惑星べスピンの建物の中も広かった。
 宇宙がこんなに狭くなったら、何に憧れたらいいんだ。
 ジュールベルヌの海洋モノのSFを読むと、今でも胸が熱くなるよ。
 その不自由さの故に、本当に世界が広いんだ。

 これじゃ、何のために舞台を宇宙に持っていったのか分からない。
 現実に近付きすぎだ。


 CGによって失われたもの。
 見えないものに力を感じさせる表現力。

 CGによって新しく得たもの。
 美しさ。 迫力。 そして嘘っぽさ。


あとがき

 これを書きながら、俺と同じ事を考えてる奴ってさぞかし多いのだろうな、 俺が書く意味あるんだろうか、と思って検索をかけてみた。
 例えば「スターウォーズ/ヒロイズム」。
 絶対、ヒロイズムが失われたことを嘆いている奴が多いはずだ。

 ところが!!
 スターウォーズ新シリーズ絶賛の嵐。
 そんな馬鹿な!?

 やっぱりスターウォーズこそヒロイズムだ、なんて書いてある。  意味分かって書いてんのか?  スターウォーズのCGも絶賛されていて、  「ストーリーが良くても映像が綺麗じゃなきゃ話にならない」なんていう 意見まで出てきてショックだった。

 これが大衆の意見なのか!!! これが・・・。
 ルーカスの嘆きが見える奴はいないのか!
 売れるほどに、こんなはずではないと、 もう終わらせてくれ、 もう私は歳を取りすぎたと叫ぶ彼の心の声が聞こえないのか。

 いや、私が勝手にそう思ってるだけですが。


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