魔法の使い方

いや、別に使い方の解説じゃなくてね・・・


 最近の映画を見ていて思うのだが・・・。
 魔法使い同士の戦いってどうしてあんなに間抜けなのだか。

 「Lord of the Ring」のあの、すっ転ばし合い。  何とかならんかね。

 杖の振り合いで、一瞬にして技が決まる辺りが全然面白くない。
 早撃ちガンマンの戦いみたいだ。  やっぱり、魔法のかっこよさと言ったら、呪文の詠唱だろう?

 どちらが先に読み終わるかの勝負であって、 相手の呪文を瞬時に聞き分け、それより早く読み終わる呪文で防衛するか、 それとも相手の呪文を妨害するかのとっさの判断。  魔法の選択。  知恵と知恵のぶつかり合いだと思うのだが、その辺りがすっかり抜けている。

 魔法の本場は西洋だろうにどうして分かんないかなぁ。
 ・・・・ひょっとして、
呪文の詠唱って考えは日本の真言密教あたりの影響で出てきた和製の概念なのか?


 敵が先手を決めて、勝負あったと勝ち誇っている。
 そこに爆炎の中から「ザーザード・ザーザード・スクローノー・・・」 なんて聞こえて来た日にゃ、  「げ、この呪文は!!」と恐れおののく、これがかっこいいんじゃないか。

 アニメのドラゴンクエストでも、 「天と地の遍く精霊たちよ・・・」なんて唱えてたけど、 俺はまだまだ不満で一杯だ。

 どうしてあんなにのんびり落ち着いて詠んでるよ!!
 もっと、誰にも何を言っているか分からないほどの、 破裂音の連続にしか聞こえないような早口で、しかも正確によみあげる、 そういうシーンを入れて欲しいんだよ。

 杖を両手に握り、目をカッと見開いたまま微動だにせず構える老魔法使い。
 その口だけが狂ったような勢いで動き続ける。
 いよいよ勢いを増し、緊張が高まる。 空気が変わる!

 彼を守るように戦う若い剣士。
 「まだおわんねぇのか、もういい! おっさん、逃げるぞ!」
 「待って、もうすぐ終わるわ!」
 「お前、呪文が分かんのかよ?」
 「このフレーズは聞き覚えがあるわ! もう少しよ!」

 ぐらいの演出が出来ないもんだか。


 いいか、ウィザードっていうのはなぁ、現代で言えば、 コンピュータ技師か物理学者みたいな存在なんだよ。  非常な集中力と論理の組み合わせで戦ってるんだよ。
 あんな気合だけで戦う体育会系にしてどうするよ。

 いかに多くの精霊やデモンとの契約を交わしているか、 いかに多くの言語を解釈できるか、 いかに状況にあった適切な組み合わせを引き出せるか、  そういうところが魔法使いの強さなわけだ。  まさにコンピュータだな。

 魔法使いが呪文を唱えながら何を考えているか教えてやろう。

 炎の呪文、・・・炎といえばイーフリート。  この間やっと契約を結んだんだよー。  見せてやるかねー。 これはちょっとすごいよー。  よし、接続、行くぞ。  うぅぅ、繋がらない。 処理重いし人気があるからなぁ。  再接続だ。 だめか。  ちょっと落ちるがフェニックス辺りなら接続できるかも。  よっしゃ繋がったぁ。  (この辺りで杖がうなり出し、周りの奴はすげーっ、とか思う。)  USER ID 入力っと。 パスワードっと。  認証中です・・・・。 うう、待たせやがる。  その間に敵を特定しておくか。  grep で、俺の周り10メートル以内、かつ杖を持っている奴は全員、 おっと、ユーザーは除外する、っと。 あぶねーあぶねー。  じゃあ、行きまっせー。 敵情報のファイル転送して・・・、 (この辺りで地が鳴動を始め、周りの奴は慌てふためく。)  よし準備完了。  後はリダイレクトで、あれ? このコマンド引数どうだっけ?  間違うとやべーんだよな。 ほれ、これでどうだっ!!  俺の方が早かったもんね。 ざまみろっ!!

ってな感じなのだろうな。 ・・・ほんまかよ。

 かっこ良さを出そうと思ったのに非常に間抜けな感じになってしまった。


 「アロホモラ!」とか「ラカーナム・インフラマレイ!」みたいな 簡易スクリプトを呼び出すのとは訳が違う、 高度な戦闘シーンを見せてもらいたいものだ。

「くそっ、スクリプトの使用が制限された!」
「どうすんだよ、おっさん!」
「黙ってろ、まだ方法はある!」
「カタカタカタカタ・・・・」
「こ、これはZ80系マシン語・・・直接操る気だわ」
「大丈夫なのかよ」
「・・・まだ即興で扱える人がいたとは・・・」

 なんていう緊張感も欲しいものである。

 「ゴッドサイダー」でパズスがペルセポリス碑文を使った辺りの 驚きがちょうどこんな感じなんだろうね。

「しまった!久しぶりなんで暴走させてしまったわい!」

 なんてことも起こりうる。


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