とてもすごいものを見たんだ!

僕は絶対に嘘なんか言ってない。アニメは見すぎだけど。


 中学の頃だった。  夜中に清家新一の本を読んでいたんだ。(笑

 清家新一の本というのは今でこそトンデモ本として有名だが UFOの理論について高度な数式で真面目(?)に説明がしてあって、 中学生の知識ではどこに誤りがあるのかとても見破れない。

 私は清家氏に感謝している。  というのは、彼の本に書かれている事をいつか理解できるようになってやる!  とがんばった結果、今の自分があるからだ。  悲しいことに彼の理論のデタラメさにも気付いてしまったが。

 とにかく、当時、いつか反重力装置を作ってやるぞぉ!  絶対にできる! 宇宙人は絶対にいるんだ、という確信と喜びに満たされながら、 明日もがんばるぞーっと決意しつつ、ベッドに入ろうとしたんだ。

 すると突然!  頭の中でズゴゴゴゴ・・・という音が響くのだ。 ズビビビビ・・かもしれない。  それは耳で聞こえる音ではなく、頭の真中で響く「音」なのだ。

 それはほんの一瞬だったが私は始めての事にとても驚いた。 (この後、3度ほど体験することになる。3度目はついこの間だ。)

 しばらく俺は考えた。これは何かの警告か?  それとも何者かが俺に何かを知らせようとしているのか?  いやいや、やばいかも。疲れていて脳みその組織が破れたのかも・・・?

 まあ、いいや、大した事じゃない。 トイレに行って寝よう。

 トイレの窓からぼーっと外を眺めていたら、 オレンジ色の丸い物体が地平線近くに浮いているのが見えた。  「ああ、月があんなに大きいや。」 そう思いながら、俺は下を向いた。  何しろ、用を足している途中だったので行き先をコントロールすることが必要だったのだ。

 しかし、・・・ちょっと待てよ・・・。  俺はさっき月を見た。 それは今反対側の空にあるはずだ!  すると、今のは何だ!?

 俺は慌てて顔を上げた。  すると、その物体(?)はまさにフォールドに入るところだった。  それは何と例えようか、枯葉のようにちぎれ・・・いや、 沢山の虫が果実を周りから食いつぶす様を早送りで見るような・・・  そんな様子でパパパパパッと欠けてゆき、光の粒になって消えてしまったのだ。

 何だったんだろう。  考えるだけの材料もなかったのでその日はそのまま寝た。

 次の日、あの物体のあったところを確かめた。  遠くの建物の上にあるタンクか何かに光が当たったのかも知れない、と 科学少年を自覚する俺は冷静に考えたのだ。  しかし、その方角には見間違えそうな反射するような物体がないばかりか、 本当にあきれるほど何もなかった。

 俺は科学的、合理的説明がつかなかったので悔しく思った。
 ・・・これじゃ笑い話にもできない。

 最近の私は笑いながらこの話をするので、聞く人は「ホントにぃ?」と眉をしかめる。  これまでの経験から、真面目に話すとすぐに笑われることを知っているので 自分から先に笑ってやるのだ。  俺だって笑いたいような話なのに見てもないやつらに先に笑われてたまるかってのだ。


解説

 この文章を本当に楽しむには幾つかの基礎知識が必要かも知れません。  まずは「ZZ(ダブルゼータ)ガンダム」の主題歌。  あのくだらない歌のせいで当時の私がどれだけ馬鹿にされたか分かるでしょうか。  清家新一の本についても知っていると良いでしょう。  「フォールド」という用語も出てまいります。  「フォールド」というのは、ワープに良く似た概念ですが、「ワープ」という言葉が あまりによく使われて陳腐化してしまったので、格好をつけるために使ったりします。  空間を捻じ曲げる「ワープ」に対して空間を折りたたむ意味で「フォールド」と呼ばれます。  よって両方とも意味はあまり変わりませんが、映像的には、 ワープはゆらゆらと空間を歪ませながら消えたりすごいスピードで駆け抜けたりするのに対して、 フォールドというのは派手に放電したり、火花を散らしたりして光に包まれながら 瞬時に消えてゆくイメージが強いです。  おそらく「超時空要塞マクロス」の影響でしょう。  そして最後にとても大切な知識は、私が無責任に嘘をついたり人を混乱させたりするのが 大嫌いだということでしょう。  冗談は大好きなのですが・・・これは矛盾しますかね。 ああ、この一言を入れたために 誰かを混乱させてしまうことになるんだろうなぁ。  本当に嘘じゃないんだよ。 何かを見たのは確かなんだ。 ・・音もね。  


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