互いの関係に影響を及ぼす現象

世の中の殆んどのものは影響し合っている。

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この記事について

 この記事は、「電荷の間に働く力」という別の記事の中で話した内容の実例を説明している。実例といっても面白くない話では申し訳ない。こんな話はどうだろうか?


光コンピュータ

 例えば、光はお互いに相互作用しない。光は電磁場の波であるから、重ね合わせても単に足し合わせが成り立つだけであって、お互いに影響されないで通り過ぎるわけだ。

 しかし、光と物質は相互作用する。光は物質にあたり、物質の状態を変える。すると、物質を介することによって、あたかも光と光が相互作用しているかのような状態を作り出すことが出来るようになる。一方から光を当てることで別方向からの光を遮断したりすることが出来ればこれはトランジスターのようなスイッチング素子であって、これを利用して光コンピュータを作ることが出来る。別の光の入力によって、入ってきた光の周波数を変えてみたりとなかなか面白い応用がありそうである。


超伝導

 また、このような現象もある。電子と電子は両方とも負の電荷をもっているので普通反発するわけだが、特別な状態の物質の中を通る時には話が違ってくる。電子が通過した直後には正の電荷を持つ周りの結晶格子がそれに引き寄せられて正電荷の密度の少々高い状態を作り出す。すると、別の電子はこの正電荷に引き寄せられるわけで、あたかも電子と電子の間に引力が働いているかのような状態になる。

 ここからが面白い。これによって 2 つの電子が束縛された状態(Cooper対という)になるわけで、2 つのフェルミオンが結合することによって、一つのボゾンのように振舞うようになる。ボゾンといえば、電子のようなフェルミオンとは違って、同じエネルギー状態にいくつでも存在できるという性質があるので、高いエネルギー状態にとどまる理由はなくなり、一斉に一番エネルギーの低い状態になだれ込むのである。

 すると、この仮想的な結合粒子は結晶格子を励起することが出来ないほどエネルギーレベルが低くなり、結晶格子との衝突をすることなしに物質中を進むことが出来る。これがBCS理論(Bardeen, Cooper, Schriefferの頭文字より)であって、超伝導の説明の基礎となっているものである。

 もちろん、ここに挙げた説明はかなり古典的でいいかげんなものであって、実際の彼らの論文はこんな甘っちょろいものではない。格子振動を量子化して生成・消滅演算子として記述する場の理論によってもっと厳密に論じられている。私は学生時代に読んだはずだが、もう殆んど忘れてしまった。

 上に挙げたのは応用的に特別に興味がありそうな例であるが、実際に世の中で起こっていることのほんの一部である。とにかく、「電場の重ね合わせが成り立つ」としている電磁気学の応用分野であっても、多体系を考えれば、単なる重ね合わせにはならない現象が多く存在するのである。この世界では「重ね合わせが成り立つ」ことの方が珍しい現象なのである。