目標達成、おめでとう
ここまでで,とりあえずの目標を達成した.
「クライン・ゴルドン方程式」「マクスウェル方程式」「ディラック方程式」という有名な 3 つの相対論的な波動方程式について,その解を運動量ごとに分解してやって粒子性を取り入れてやること.そしてそれぞれのハミルトニアンを粒子性を導入した形で表してやること.これは第 2 部の最後の「次にやるべきこと」というところで話したことを実行していたのである.
これらの作業によって 3 つの波動方程式の相違点と,それ以上に大きな類似点が見えてきた.これらの方程式は全く異なるものではなさそうだ.ハミルトニアンの形はとても良く似ているし,作業内容もよく似ていた.
違いは何だったか.クライン・ゴルドン方程式はスカラー的な場を記述しており,マクスウェル方程式はベクトル的な場を記述しており,ディラック方程式はスピノル的な場を記述していた.これらの方程式はそれぞれ異なる変換性を持つ場の代表だったというわけだ.
マクスウェル方程式は電磁場を表すものだとか,ディラック方程式は相対論的な電子の挙動を表すものだとか,クライン・ゴルドン方程式はディラック方程式を思い付く以前に試作された出来損ないだとか,かつてはそんな固定したイメージを持っていた.しかしこれらは電子や電磁波の粒(光子)を表すためだけにあるのではないのかもしれない.
スカラーか,ベクトルか,スピノルか・・・それ以外にはあるだろうか?これらの変換性は数学的にかなり基本的なものだ.あらゆる素粒子は,この 3 種類の変換性のどれかに分類されるのではないだろうか.だとすれば,今までにやった内容をもう少しアレンジしてやれば別の種類の粒子をも表すことができるかもしれない.
他にはテンソルという可能性もあるが,基本的な粒子が持つ性質としては複雑過ぎる気がする.ひょっとしたら重力を伝える粒子「グラビトン」がテンソル場として記述できる可能性があるようだが重力を量子場として記述する試みは今のところうまく行っていないようである.グラビトンはスカラーである可能性も考えられているようだ.はっきりしないことはあまり言わないようにしておこう.
例えばクライン・ゴルドン場については,すでに電荷を持つ場合とそうでない場合を試してみたのであった.それは実数場にするか複素場にするかという違いであった.ディラック場については最初から複素場しか試していなかった.マクスウェル場では実数場しか試していない.
マクスウェル場は質量が 0 の粒子を表していたわけだが,ひょっとすると質量を持つベクトル場の粒子というのも理論上は許されるのではないだろうか?逆に,質量のないスピノル場の粒子というものだって試してみてもいい気がする.
こういうことをあれこれ試すことで,理論の全体像がつかめるようになれば嬉しい.今はほんの一部しか見えてないような気がするのだ.