物理を解説 ♪
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対数関数の解析接続

思いがけず、寄り道が長くなってしまった。
作成:2012/9/24

疑問と計画

log_e zをテイラー展開したものを解析接続の手法で定義域を拡げて行き,原点の周りを一周すると2πiだけズレるという話を聞いた.しかしそのズレというのが一体どのような理由で具体的にどのように出てくるのかについてはイメージし辛い.

今回,自分なりの方法で泥臭く確かめてみたので,その手順を記録しておこうと思う.まずは計画を聞いてもらうことにしよう.

対数関数の性質を調べるための作戦図

初めにz=1を中心としたテイラー展開を考える.これはz=0に引っかかるので収束半径は 1 である.次にz=iを中心としたテイラー展開を考える.これもz=0に引っかかるので収束半径は 1 である.この二つの収束円には共通部分があるので,そこを頼りにして二つのテイラー展開が一致するように調整してやれそうだ.

次はz=-1を中心にしてテイラー展開したものを同じように繋げてやり,その次はz=-iを中心にしたものと繋げてやる.これが最初のz=1を中心としたテイラー展開と矛盾なく繋がるかどうかが見どころである.


第 1 段階

z=aを中心としたlog_e zのテイラー展開は次のように表されるのだった. 数式 どこを中心にしてテイラー展開するにしても,この式に当てはめてゆけば良い.まずはz=1を中心にしたテイラー展開だが,次のように表せるだろう. 数式 log_e 1には無限多価性があって,本来ならばlog_e 1=2πniであるのだが,ここではその中から敢えてlog_e 1=0を採用したのである.

次にz=iを中心にしたテイラー展開を書き出そう. 数式 ここではまだlog_e iの値を具体的には定めないでこのままにしておく.

さあ,次に何をするか(2) 式と (3) 式が,両者に共通な定義域内で一致することを確かめたい.どちらも同じlog_e zという関数をテイラー展開したものなのだから一致するのは当然のような気はするのだが,これだけ見た目が違うと,同じzを代入したときに同じ値を返してくれるのかが不安になるのだ.

色々と検討してみたが,共通な点としてz=(√2 )/2 (1+i)を使って検証するのがもっとも計算が楽だろうという結論に至った.なぜならば,この点は|z|=1であり,偏角がπ/4であるから, 数式 というとても簡単な値になることが既知だからである.複素平面上の対数関数は意外とややこしくて,他の点では規則性がつかみにくいのである.

では (2) 式と (3) 式にz=(√2 )/2 (1+i)を代入してみよう. 数式 さあ,困った.この右辺がどちらも同じ値になることをどうやって証明したらいいのだろう計算が得意な人はすぐに分かるのかも知れない.しかし私は頑張って展開を試みたりしてパターンをつかもうとしたがうまく行かず,かなりの時間を費やしてしまった.実はこのz=(√2 )/2 (1+i)の点でやるしかないという諦めの境地にたどり着いたのは,そういう試行錯誤の末のことであった.

さて,私がどうやって解決したかというと,(5) 式のΣの部分については (4) 式をそのまま受け入れてπi/4になるのだろうと考えることにしたのである.多分間違ってはいないだろう.(6) 式のΣの計算についてはお手上げだったので,ネット上の数式計算機であるWolfram Alphaに丸投げしてみた.なんとどうやって計算したのか分からないが,答を返してくれたのである.それに気を良くして,以後の計算は全てコンピュータに計算してもらった.

『sum (-1)^(n+1) (1/n) (1/i)^n ((sqrt(2)/2)(1+i)-i)^n, n=1 to infinity』と入れれば答を出してくれるのである.

その計算が本当に合っているかどうかを自力で確認する方法は後になって思いつくことになるのだが,とりあえずは結果を見てもらうことにしよう.


計算結果の列挙

結果を列挙したいのだが,z=(√2 )/2 (1+i)などという書き方は分かりにくいし場所も食うので,複素平面上の 4 つの点を A, B, C, D と名付けることにしよう. 数式

対数関数の性質を調べるための作戦図に4つの点を書き足したもの

そして例えば,a=1を中心に展開したテイラー展開のzに例えば A の値を代入したものはX_1(A)と表し,他も同じように表そう. 数式 この (7) 式と (8) 式は先ほどの (5) 式,(6) 式と同じものである.


解決編

ここまでやれば知りたかったことが出てくるのはもうすぐだ.

解析接続のためには (7) 式と (8) 式は一致していなくてはならないはずだが,結果は違っているように見える.しかし (8) 式のlog_e iの値をまだ決定していなかったのだった.これをlog_e i=πi/2だとしておけば問題ないであろう.

(8) 式と (9) 式は全く同じテイラー展開の式にそれぞれ違う値を代入して作ったものだから,(9) 式で使っているlog_e iは (8) と同じくπi/2だとしておかないといけない.つまり (9) 式は(3/4)πiである.(9) 式と (10) 式は同じ値になっていなくてはならないはずなのでどうしたらいいか.(10) 式で使っているlog_e (-1)の値をπiとすればいいのである.

気持ちが焦る.続けよう.(10) 式と (11) 式で使っているlog_e (-1)は同じものだから,(11) 式の値は(5/4)πi.これと (12) 式が同じ値になっているはずなので,(12) 式で使われているlog_e(-i)の値は(6/4)πi,いや,(3/2)πi.

結果が見えてきた.思ったような結果になりそうだ.あと少し.(12) 式と (13) 式で使っているlog_e (-i)は同じものだから,(13) 式の値は(7/4)πi.これと (14) 式が同じ値になるには・・・log_e 1=2πiでなくてはならない

これが欲しかったものだ.初めにz=1の周りに展開した時にはlog_e 1=0だと解釈していたのだった.しかし 1 周してきた時にはlog_e 1=2πiだとしておかないと解析接続ができないのである.これは元のz=1の周りのテイラー展開とは別のものである.解析接続で繋いできたひと続きの「同一の関数」ではあるが,一周してきたところで繋がる相手は元のテイラー展開ではなく,2πiだけズレた「別のテイラー展開」なのである.


検算

さて,コンピュータに教えてもらった値を使ってここまでの結果を出したわけだが,式を良く見れば,そんなに難しくはない気がしてくる.(7),(9),(11),(13) 式のΣの計算部分は,実は同一であることが変形で簡単に示せるではないか.

同様に,(8),(10),(12),(14) 式のΣの計算部分も同一であることが示せる.しかしそれらの値が-πi/4になることは直接は分からない.

それについては (14) 式のΣの部分を見ればいいのだ.それは無限多価性を考えずにlog_e zに点 D の値を代入したものと同じなので, 数式 を既知だとすれば納得できる.



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