物理を解説 ♪
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この世界は
ミンコフスキー時空か

仮想読者(著者自身)からの質問です。
作成:2021/4/22

(質問者)この世界はミンコフスキー時空なのですか

ご質問の意図によってはYESですし,NOでもあります.

少しずつ場合分けしていくことにしましょう.

「一般相対性理論」では質量が存在することによって周囲の時空が曲がることが導かれますので,状況によってはミンコフスキー時空から少しずれることになります.今回はそのような状況を除外して,時空に曲がりのない「特殊相対論」の範囲内での話ということにしましょう.

数学的に厳密なミンコフスキー空間の定義を持ち出すのも面倒なので,というか私には荷が重いので,特殊相対論で議論される範囲に絞って話すことにします.

ミンコフスキー時空というのは 4 次元時空内の 2 つの点の 4 次元的距離(の 2 乗)を 数式 のような形で定義することにした空間です.この距離を変化させない変換のことをローレンツ変換と呼びます.我々の住む世界ではローレンツ変換が成り立っていることが実験的に確かめられていますので,我々はミンコフスキー時空内にいるという考え方が成立します.この意味ではご質問への答えは「YES」です.

(質問者)ローレンツ変換は 4 次元的距離を変化させないということだけから導くことができますか

気になりますよね.少し長くなるので具体的な計算は次回にしましょう.結論だけ先に言いますと,その仮定だけでローレンツ変換を導くことができます.少々の物理的な条件を付け加える必要がありますが,ごく最低限のものなので,それくらいは入れても当然だと納得できる程度のものです.

(質問者)分かりました.では「NO」とおっしゃるのはどういう場合でしょうか

先ほどの話は「もし4次元的距離をこのように定義するならば」という条件下での話です.ところが我々はそのような 4 次元的距離を「普段使い」しているわけではありません.あくまでも,相対論を論じるときにそのような距離を導入して道具として利用するというだけです.

もし相対論的な文脈を無視するならば,4次元的距離を先ほどとは一部符号を変えて 数式 のように定義してもいいわけです.いかにも 4 次元での 2 点間の離れ具合を表している感じがします.とは言ってもそのような距離が役に立つような場面を私は知りませんし,これについて論じること自体無意味かもしれません.そうなるとやはり,我々はミンコフスキー時空内にいると考える方が現実的かなという気もしてきます.

我々が「普段使い」しているのは 3 次元的距離ですね.これは残念ながらローレンツ変換によって変化してしまいます.だからと言って 3 次元的距離の使用が正しくないというわけでもありません.ただそのように定義し,ローレンツ変換によって変化してしまう量だと納得して使えばいいわけです.

何を伝えたかったのか私にも分からなくなってきました.結局「距離」などというものは 3 次元的距離だろうと 4 次元的距離だろうと定義次第であって,たまたま現実に即して使えるかどうかという論理的な意味しかないということを言いたかったようです.「距離」というものが現実そのものを表しているのだと考える理由はないということです.

しかしそうなると,我々がミンコフスキー時空内にいると考えるのはより現実に合う見方ですから,それを根拠にしてはっきり「YES」と答えていい気もしてきました.



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