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ハミルトン・ヤコビの偏微分方程式2

ハミルトニアンが時間を含まない場合。
作成:2008/7/31

時間を含まない方程式

前回はハミルトン・ヤコビの偏微分方程式を紹介し,使い方を説明した.それは次のような式だった. 数式 ここでハミルトニアンHが時間tを含まないという制限を設けると,この方程式を解くのはかなり易しくなる.ずっと前に説明したように 数式 という関係があったので,(いや,ごめんなさい,ホントはまだ説明していません.後でこれについての記事を追加する予定です.)今,この式の右辺が 0 だということは,Hの変数であるpqは時間に依存して変化したとしても,H全体の値は変化しないで一定の値Eになることを意味している. 数式 この時,(1) の方程式を満たすWは次のような形になる. 数式 後はS(q)をどうやって導くか,.(2) 式のHの変数として∂W/∂qというものがあるが,そこに (3) 式を代入して計算すると∂S/∂qとなるから, 数式 と書いても同じだろう.これは関数S(q)についての (1) 式よりも単純な偏微分方程式になっている.これを「時間を含まないハミルトン・ヤコビの方程式」と呼ぶ.単純とは言っても,現実の問題に当てはめようとするとややこしいかも知れない.ここではq∂S/∂qという記号で代表して書いているが,実際にはq_{1},q_{2},…,q_{f},∂S/∂q_1 , ∂S/∂q_2 , …, ∂S/∂q_{f}という多数の変数を略しているのである.

これを解くことは数学の技巧上の問題なので,ここに具体的な説明を挟むのはやめておこう.いや,幾つか書いてはみたのだが,記事の大半を占める分量になってしまった.本題でないところで長々とさまようのは面白くない.まぁ,別の記事として後で発表するかもしれない.

とにかく関数Sは合計f個の任意定数を含む形で導かれる.求まった解に任意定数を加えたものも解であるので,定数はそれ以外にもう一つあるわけだが,そいつのことは無視している.それらf個の任意定数をa_iとでも表すことにしよう.つまりSS(q,a)という形の関数になる.それらの定数a_iは完全に自由に決められるわけではなく,Eに縛られるので,自由度はf-1である.逆に見れば,Ea_iの関数になっているとも言える.要するに, 数式 となっており,母関数W(q,a,t)という関数の形で求められたということだ.


あとは前回と同じ

ここまで来たら後は前回と同じことを繰り返すだけなのだが,その途中で表れる式を使って議論を展開したいので,くどいかも知れないが全く同じ説明を最後までやっておこう.

今は正準変換後のP_iQ_iが定数となるような変換を探しているのだから,ここに出てきている定数a_iこそがP_iのことなのだと解釈してやる.

正準変換は,W(q,P,t)という形の母関数を使用したときには, 数式 という関係が使えるのだった.だから,この式に,ここでの結果,つまり (4) 式などを代入すれば, 数式 となる.ここで (8) 式のQ_iというのは定数であるべきはずなのに,右辺を見るとtが入っているのでおかしいじゃないかと思うかも知れないが,S(q,a)は変数の各q_iを通して時間変化するのであり,それとうまく打ち消し合っているのであろう.Q_iが定数であることを強調するために,これをb_iで書き直そう. 数式 この式からb_iは定数であるけれども(q,a,t)の関数として表せるということになる.この式をq_iについて逆に解けば,q_i(a,b,t)の関数として表すことができる.a_i,b_iは定数だから,これはtに依存する関数だということだ.この式が欲しくて計算していたのであり,目的は達せられたことになる.

p_iについては (7) 式を使えばいい.Sの変数は(q,a)だから,p_i(q,a)の関数として求まるだろう.そのq_iの部分に今求めた結果を代入すれば,こちらも(a,b,t)の関数として得られることになる.


関数 S の意味

ここで出てきた関数S(q,a)には特別な利用価値がある.本来,ここまで来たら母関数Wを使って正準変換すべきところだが,気が変わって,ここで求めたS(q,a)を母関数として変換したら,一体,どんな結果になるだろうかというのを考えてみよう.

ハミルトニアンの変換には次の式を使うのだった. 数式 ここで母関数Wの代わりにSを使うのである.S(q,a)にはtが含まれていないのだから,変換後のハミルトニアンKは量的には変換前と等しいということだ.ただしKは変換後の変数を使って表し直す必要がある.

これ以外に (5),(6) 式のような関係式がある.まずは (5) 式から見よう.この関係式にWの代わりにSを使うとどうなるかだが,先ほどやった計算を見ればこれはすぐに分かる.(5) 式に (4) 式を代入した結果が (7) 式になるのだった.つまり,Wの代わりにSを使おうがこれは何ら変わりがないということだ.

では (6) 式はどうなるかというと,これも先ほどの計算から見えてくる.(8') 式を移項してみよう. 数式 少し分かりにくいかも知れない.どう説明したら分かってもらえるだろう.ここに出てくるa_iというのは,変換後の運動量P_iのことであり,それは時間変化しない定数であるからa_iと表しているのである.この式と (6) 式を見比べてやれば,右辺はWSに置き換えただけである.違いは左辺に現れる.左辺には変換後の座標変数Q_iが出るはずなのだが,母関数としてSを使った場合には,それはb_i + ∂E/∂a_i tであり,もはや定数ではないのだ.

要するに,母関数としてS(q,a)を使った変換は,新しい運動量P_iを定数a_iとし,新しい座標変数Q_ib_i +ω_i tという形にする変換だということだ.このω_iというのは,∂E/∂a_iのことだが,これは定数であるのでこのような記号ω_iを当ててみたのである.

こんなものがどうして重要なのかはまだ想像が付かないだろう.エネルギーが一定の場合に限定しての話なので応用範囲が広いとも思えない.今回はただ関数Sの紹介をするのが目的であったのでこれくらいにしておこう.次回からこれを使った理論を展開して行くつもりである.



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