執筆の動機
なぜ化学にまで手を出そうとしているのか.(物理も完成させてないのに!)
ネット上で学べる化学の現状について満足していないからである.
「化学について解説しているEMAN物理のようなウェブサイトはありませんか?」という質問はよく目にする.もう何年も前から目にしている.困っている人は多いのだろう.しかしいつまで待っても「ここがいいです!」と名前が上がることはない.
「化学の解説サイトを作ろうと思います!真似してもいいですか?」という若い人からの問い合わせを毎年のように頂く.そのたびに「もちろんです.頑張ってください!応援しています!」と返事しているのだが,最近は一瞬迷うことが増えてきた.誰にも彼にも軽々しく応援すると言っていていいものだろうか?
自分はこれまでに誰を応援すると言ったのか,全ての人を思い出すことができない.彼らはどこへ消えたのか.出てきてくれれば思い出せるかもしれないが,待っても待っても一向に目立った動きは現れない.おそらく大学で学ぶ化学の内容の難しさを知ってウェブサイトを作っているどころではなくなってしまったか,分野の多さや広さを知って,書くべき記事の多さに圧倒されてしまったか,ウェブサイトを作るという技術的な壁に挫折してしまったか,アクセス数がなかなか増えなくてモチベーションが保てなかったか,そんな感じだろうと想像している.
ひょっとしたらこれらの困難を乗り越えて作り続けていらっしゃる最中かもしれないが,目立つくらいの存在になるのは結構難しいのである.
その割には数学や物理に関しては解説サイトが色々とあるので,化学は何かが違うのかもしれない.
私自身はEMAN物理の認知度を踏み台にして書き始めるのでかなりずるいとは思うのだが,それでもネットの海に埋もれたり,挫折したりする可能性はあると思う.やってみないと分からない.
展望
残念ながら私は化学にあまり詳しくはない.高校の範囲の化学ですら理解できているか怪しいくらいだが,当時の成績がぱっとしなかったというだけであり,勉強し直せばあっという間に自信を取り戻せるかもしれない.取り戻したいのだ.
物理を勉強したお陰で,エンタルピーも分かるし,エントロピーも分かるし,分子運動論も分かるし,エネルギーも分かるし,対数も分かるし,電磁気力の働き方も分かるし,量子力学も分かるから電子軌道も分かるようになっている.多分,大丈夫だ.
高校の時には「これは今は分からなくてもそういうものだから受け入れて覚えておきなさい」などと言われて納得が行かなかったことがたくさんあった.私は理由を説明してもらえないでただ覚えるだけの例外というやつが大嫌いだったのだ.
そのような例外は無限にあるわけではないのだから覚えてしまえばいいのだろうが,当時の私には無限にあるかのように感じられた.根拠のはっきりしないモヤモヤとした知識はすぐに覆されて役に立たなくなるのではないかという恐れがあった.私は無駄を極端に恐れていたのだ.あるいはこんな調子で「あれも例外」「これも例外」とか言いながら,何もかもを受け入れさせられるのではないかという警戒感もあった.
その中には,当時は専門家の間でも意見が分かれていてはっきりしていなかったようなものが幾つかあったはずである.この数十年の間に説明の仕方が変わったものが幾つかあったと記憶している.具体的に挙げようかと思ったが,混乱を誘うといけないので今はやめておこう.こういうことはもっとよく調べてから話したほうがいい.
高校のときの担任が大学では化学を専攻していたそうで,「自分は錯体を研究していたがあれはまだ分からないことだらけで……」みたいな話を良くしていたのを覚えている.学問の分からなさ,難しさばかりを強調する人だという印象だった.当時の私の好みはそういうものではなかった.新しい理論によっていかに世界が良く分かるようになったかという感動に触れたかった.
まだ高校生だからという理由で保留にされた説明の多くも,今なら理解できるようになっているはずだ.当時はまだ議論の只中にあったような話の多くも解決しているはずだ.
当時,自分が聞きたかったような話をしていきたいと思う.
方針
高校でのカリキュラムは完全に無視する.何しろ,量子力学から得られる知識を躊躇なく使いながら話をする予定だ.しかしそれが難しすぎて先へ進めないというのは良くないので,数学の使用は最小限に抑える.
最初はどの化学物質にもほとんど共通な話でざっと全体をなぞる.個々の具体的な化学反応の話は後回しである.無事にそこまで行けたなら,専門書を読みながらテーマを探して記事を増やしていくことにしよう.
化学にも物理と同じくらいの多数の細分化された分野があるのだろうが,私はまだその辺りの全体像について良く知らない.とりあえずは大風呂敷を広げないで,「化学」と題した小さな目次の中で少しずつ記事を増やしていくことにする.
大学の化学科では実験技術的なことも多く学ぶだろうが,おそらく私はそこまでは手が伸ばせないだろうし,安全面に対する責任から言っても,未経験者の私は手を出さない方が良いと思っている.そういうところまで手を出さないとなると,ひょっとすると,記事の数は少なくて済むかもしれない.