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ガリレイ変換の誤解

相対論に慣れてきてガリレイ変換が分からなくなった話。
作成:2021/5/12

(質問者)ガリレイ変換では物体の長さが縮むことはありませんし,時間が縮むこともありません.だとしたら 4 次元的距離も変化しないのではないでしょうか

残念ながら,ガリレイ変換では 4 次元的距離は変化してしまいます.物体の長さが変化しないように見えるのは,ある定まった時刻の両端の位置を見ているからです.動いている棒の両端の位置をそれぞれ異なる時刻に測って差を求めれば,元の棒の長さとは違う距離が算出されてしまいます.棒が止まって見える慣性系にいる場合には棒の両端をそれぞれ異なった時刻に測っても問題ありません.しかし棒が動いて見える慣性系ではこのような問題が起きます.立場によって棒の両端の空間的な距離が違うという結果になってしまうのです.

(質問者)自分の考え方に誤りがありそうだということは分かりましたが,まだイメージが掴めないでいます.

では図解してみましょう.ガリレイ変換と言えば次のような説明図がよく出てくると思います.

基準となる静止系Kに対してx軸方向に速度vで移動する観測者から見た系をK'とします.時間経過tとともに両者の原点は距離vtだけずれていきます.これだとどの慣性系からも共通している位置関係を持った確固とした世界が存在していて,それを平行移動して観察しているだけだというイメージが強いですね.

しかしローレンツ変換の説明でよく使われる形式を使ってガリレイ変換を表すと次のようになります.

K系のx軸の原点は時間経過とともに真上へ向かいますが,K'系のx軸の原点は時間経過とともに右上に進みます.それに合わせるように,K'系の時空の座標軸は全体的に傾いています.相対性理論は時間と空間が「相互に」入り交じる理論だという説明が多いですが,このようにガリレイ変換であっても表し方によっては似たような状況ではあるわけです.でも「相互に」は入り混じってませんね.時間の方は影響されていませんから.

(質問者)確かに,それぞれの慣性系によって時空の上にかぶせられた座標の網の形が違うという,相対論に近いイメージですね.目から鱗です.

感心してもらえて嬉しいです.さらに説明を続けますね.先ほどの図に 4 つの点を描いてみます.

AB 間の時間的距離は 0 です.水平に引いた線が同時刻を表していますから,これはどちらの系にとっても同じです.空間的距離は横向きに 3 マス分ですが,これもどちらの系にとっても同じ値です.

AC は目の錯覚で傾いて見えるかもしれませんが,A から真下に向かって引いた線です.時間的距離は上下に 3 マス分で,どちらの系にとっても同じです.空間的距離はK系にとっては 0 ですが,K'系にとっては少し横へずれているので 0 ではなくなっています.

AD でも同じことが起きています.時間的距離は上下に 3 マス分で,どちらの系にとっても同じです.空間的距離はK'系にとっては 3 マス分ありますが,K系にとっては 2 マス分よりも少し大きいくらいしかありません.

このように,時空の 2 点の置き方によって,4 次元的距離が変換によって変わってしまうことの方が多いわけです.

(質問者)ガリレイ変換によって変化しない 4 次元的距離というものをうまく定義することはできませんか

なるほど.そういうことは考えたことがありませんでしたが,どうなんでしょうねガリレイ変換の前後で保存する量を探せばいいのかな速度は無理,運動量も無理,加速度は……加速度はガリレイ変換で変化しなさそうですけど十分条件なのかな

気になったので試してきました.「変換前後で加速度が変化しない」という条件と,最低限の物理的な仮定をすればガリレイ変換だけが導かれるようです.しかし加速度は 4 次元的距離と呼べるものではないですね.

もっと単純に「時間方向の距離が変化しない変換」という条件ではどうでしょう試してみましたが,これでガリレイ変換だけが出てきます.物理的な仮定としては,二つの慣性系の相対速度がvであることと,変換後に逆変換を行えば元に戻ることを使いました.ここで言う逆変換というのは,相対速度を逆符号にした変換のことです.

あまりかっこよい結論ではない気がしますが,これくらいしか思いつきませんでした.

(質問者)ありがとうございます.ガリレイ変換というのはローレンツ変換の特別な場合(速度が小さな場合の極限)になっていますから,ミンコフスキー空間と同じ 4 次元距離の定義から一緒に導かれてきてもいいのではないかと期待してしまったのです.

疑問の発端はそういうことだったんですね.ガリレイ変換のイメージは単純ですけど,確かに時空の対称性という概念とは馴染まない感じがしますね.



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