コマはなぜ
立っていられる?

コマが回っているのを見ると無条件に感動しないか?

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 コマというのは実に魅力的である。回転しているというだけで、普通なら倒れてしまうような不安定な姿勢で立ち続けていられるのである。それで、回転というものには未知の特別な力があるのだと考える人や、回転に神秘的なものを感じたりする人たちが多く出てくるわけだ。「回転によって重力が生み出されているのだ!」なんて主張する人まで現われる始末である。(トトロもコマの上に乗って空を飛ぶし・・・)

 その気持ちは理解できる。私も学生時代、コマがなぜ立っていられるのかについて深く考え続けた。それを説明していると思われる、教科書の「角運動量保存則」の部分を繰り返し読んでみたが理解できずに苦しんでいた。

 友人に聞いても、どうもはっきりした答えが返ってこない。それでいてあまり不思議にも思わないのか、真剣に考えてくれる様子もない。

 「なぜコマは立っていられるのか?」

 この質問に明快に答えられる人が意外に少ないのである。それがますます、回転というものに神秘を感じる原因となってしまう。


実は単純明快に答えることは難しい

 一般向けの解説書などでは、コマが立っていられる理由として、「遠心力で軸の周りに均等に引かれているから」と解説してあるものが見られる。有名な教授が書いておられたりするのだが。私はこれを読んだ時、「なるほど、こんな簡単なことだったのか!」と感心してしばらくの間これを信じていた。しかし後になってじっくり考えてみるとこれでは何の説明にもなっていないということに気付いた。これは「軸がコマの重心を通っていないと不安定になる」理由を説明することは出来るが、なぜ軸が倒れないかを説明することは出来ない。たとえコマの軸がまわりから均等に引かれようとも、重力はそれ以外の力としてある一方に働き、そのバランスを崩すことになるからだ。


歳差運動

 コマが回りながらその軸を不安定にぐるぐる回すあの動きを「歳差運動」と呼ぶ。惑星の自転にもこの動きがあり、年ごとに軸の向きに差が出るから「歳差」と呼ばれているのではないかと思うが、違っていたら教えて欲しい。昔はみそすり運動という別名があったようだが、今もそうだろうか?最近では味噌擂りをしないので、分りやすいように首振り運動と呼ばれているかも知れない。

 実は、この歳差運動を分かりやすく説明することが、コマがなぜ倒れないでいられるかを説明する近道になるのである。詳しいことは次の記事で話すことにして、ここでは要点だけを簡単に説明するだけにしよう。次のようになる。

 コマの回転軸が傾けられそうになると、回転の影響で、軸は加えられた力とは違う方向へ移動することになる。コマは重力によって傾けられようとしているのだが、傾きをそれ以上増す方向へは倒れないで、コマの軸の上端は水平面上をぐるぐる回ることになる。これがコマが倒れない理由である。コマの首振りは、重力とは違う方向へ軸が傾いた結果起きる現象なのである。

 途中の一番面倒な部分を軽くごまかしたのでこんなに簡単に説明できてしまった。省略した肝心な部分は、「回転の影響で加えられた力とは違う方向へ軸が移動する」というところだが、これは特別に不思議な現象ではなく、いろんなところで体験できるものである。


ジャイロ効果

 科学館や航空博物館などへ行くとよく、高速で回るジャイロを傾けるときに感じる奇妙な力を体験できるコーナーがあったりするのだが、体験されたことはあるだろうか?回転している物体の軸は力を加えた方向には回ってくれないのである。それとは垂直の方向に移動することになる。これは航空の分野では「ジャイロ効果」と呼ばれている。

 手軽に体験したければ、「地球ごま」という名前の商品が売っている。(昔はそこらで買う事が出来たが最近は見かけない。東急ハンズにあるらしい。)あるいは自転車の修理の時に車輪を外した時にでも、軸を持って誰かに車輪を回してもらい、それを傾けてみればいい。

 なぜ回転していると、力を加えた方向とは別方向へ移動するのだろうか?これを考えるのは少々複雑なので数学的道具の助けがあった方がいい。それでも簡単に理解できると思うので興味のある方は次回の記事も読んでいただきたい。